研究実績の概要 |
脳皮質下, 脳幹など脳血管の穿通枝領域の梗塞のうち, Branch atheromatous diseaseは, 進行性かつ重度の後遺症を生じ得る重要な病型である. しかし, 従来のMRIでは, 細径の穿通枝や近傍の動脈硬化性病変を描出することが困難なため, その病態は病理所見から提唱された概念の域を出ていない. 本研究は, 脳の穿通枝血管を描出可能な脳血管造影による3D rotational angiography画像と, MRI画像を融合するシステムを開発し, 穿通枝領域の脳梗塞の病態解明に資する情報の確率を目的とした研究である. 2020年度は, 穿通枝領域に梗塞を有する症例を集積, データベースを作成した. また, 研究支援目的の画像解析システム開発の経験を持つ, マックスネット社が制作したソフトウェア上で, 脳血管造影画像とMRI画像の位置合わせを可能にするアプリケーションを開発した. これにより, 穿通枝梗塞の融合画像から得られた穿通枝血管近傍の動脈硬化や穿通枝自体の形態の解析が可能となった. また, 位置合わせアプリケーションを用いて, 位置合わせの正確性検証のための位置合わせ実験の手法を確立し, これにより融合画像の位置合わせの誤差を定量化可能となった. 穿通枝領域単独の脳梗塞23例について, 融合画像作成および解析を行い, 11例で脳梗塞の責任穿通枝血管を同定可能であった. この研究成果を第46回日本脳卒中学会学術集会で口演発表した. また, 穿通枝領域に梗塞を有するすべての脳梗塞例の解析を進めている. 今後論文作成, 学会発表を予定している.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は, 前方循環の穿通枝梗塞を有する症例において, 責任穿通枝血管の描出が可能であった症例と, 穿通枝血管が同定困難であった症例の特徴の解析を行うまた, 穿通枝血管の形態を評価し, 臨床病型との関連を解析する. また, 前方循環の単一穿通枝梗塞の症例のみに限定し, 梗塞の責任となる血管, 白質病変に分布する血管, 正常脳実質を通過する血管の形態を比較する予定である. 上記の研究結果を, 学会発表予定で, 作成論文については, 令和3年度の採択を目指す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
・次年度は, データ解析のためのパソコン, 統計ソフト購入費用のため, 研究経費を使用予定です. ・学会参加については, 参加費用が必要となります。現地参加が可能な学会については, 出張費も使用予定です. ・論文作成時には, 英文校正費用などの諸費用として研究経費を使用します. ・論文作成の際に統計解析や脳血管解剖に関連する書籍を購入する可能性があり, 研究費用を使用します.
|