研究課題/領域番号 |
20K16723
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鶴田 裕輔 京都大学, 医学研究科, 技術職員 (40645587)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高精度放射線治療 / 位置精度 / 品質管理 / 線量分布 |
研究実績の概要 |
放射線治療では,立案された治療計画の妥当性を事前に物理的・技術的に評価することが推奨されているが,照射後の実績データを使用した評価方法は確立されていない.本研究では,放射線照射時に取得できる実績データをもとに実績線量分布を作成することであった. 令和三年度の研究では,多発転移性脳腫瘍に対して定位放射線治療を受けた患者の実績線量分布を解析した.令和二年度の段階では不備があった画像作成プログラムの改修に成功し,任意の位置誤差を考慮したCT画像を作成でるようになった。 本研究では,実際の照射中に定期的に取得する位置確認用X線画像より算出された位置誤差にもとづいたCT画像を作成した.それぞれの画像に線量分布を計算し,重ね合わせることでその患者の実績線量分布とした. 多くの先行研究では,回転誤差や並進誤差をそれぞれ単独である一定量発生させ,線量が低下する誤差量を見積もっている報告が多い.この方法では実績線量分布を反映できていないため,我々の研究では,位置誤差と回転誤差の両方を含めて解析を実施した.また,線量が低下する因子として照射の中心位置から腫瘍までの距離が報告されている.我々の研究結果では,腫瘍までの距離に関係なく線量を担保できていることも確認できた.総合的に,計画線量と実績線量を比較したところ,統計的有意差は認められなかった.ただし,これらは照射中の位置誤差が臨床的に許容できる範囲内に保てていることが前提である. この研究成果に関する英語論文について執筆中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和二年度に一度作成した位置変動に基づいた任意のCT画像を作成するプログラムに一部不備があったため,まず令和三年度はその改修に取り組んだ。プログラムがうまく動作することを確認した後,位置誤差を考慮したCT画像を作成することに成功した.このCT画像をもとに線量計算を行うことで,より実績値に近い線量分布を得ることに成功した. 現在,データの解析がおわり英語論文を執筆中である.令和四年度には受理される見込みであるため,おおむね順調だと判断した.
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今後の研究の推進方策 |
令和四年度はまずは論文受理に向けて研究に取り組む予定である.また,令和三年度に取得した線量分布データと治療成績との関係についても解析する必要があると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度と同様に新型コロナウィルス感染拡大により、国内および海外学会での情報収集が制限されたため次年度使用額が生じた。しかしながら、研究を進めるうえで必要な環境は十分に整えることができた。令和四年度が最終年度であり、論文投稿や学会発表など成果報告を中心に研究費を使用する予定である。
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