本研究では、子宮頸癌に対する根治的放射線治療を開始する前に遺伝子変異解析のため少量の生検検体を採取し、子宮頸癌の遺伝子変異情報を次世代シークエンサーを用いて網羅的に解析し、放射線治療の側面から治療効果や生存との関連を調べ、ひいては遺伝子変異情報に基づいて個別化された子宮頸癌の新たな治療戦略の開発につなげることを目的としている。具体的には、遺伝子変異情報に基づいて局所遺残や照射野内再発が多い群を特定できれば局所線量を増加させる、また照射野外再発や遠隔転移が多い群へは照射範囲や化学療法の内容を検討することで治療成績が向上する可能性がある。反対に治療成績が非常に良好な遺伝子変異を有する群を特定できれば、治療強度を落として有害事象の低減を期待できる。さらには子宮頸癌の発症にはHPV感染が最大のリスク因子とされているが、本研究では子宮頸癌の網羅的遺伝子変異情報と原因HPV型の関連を詳細に解析し、子宮頸癌発症についての新たな知見を得ることも目的としている。子宮頸癌の原因となるHPV型は多数あり、その分布には地域差があることが報告されているため、本邦における子宮頸癌の網羅的遺伝子変異情報と、放射線治療の効果や原因HPV型の関連を調べる試みは独自性が高いと考えられる。本研究について、2020年度から検体採取を開始し、これまで24検体を採取し、すべての検体からDNA抽出が完了した。すべての検体について網羅的遺伝子解析を完了し、治療後の経過観察を行っている。
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