研究課題/領域番号 |
20K16735
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
吉田 純 岩手医科大学, 医学部, 非常勤医師 (50869047)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 鉄沈着 / 7 Tesla MRI / 認知機能 / 過灌流 / 頚動脈内膜剥離術 |
研究実績の概要 |
脳主幹動脈狭窄・閉塞症に対する血行再建術に過灌流が認知機能障害を来すことは知られているが、その詳細なメカニズムはいまだ不明である。認知機能へ影響を与える脳内の存在因子として鉄の存在が知られており、血行再建術後の過灌流では、一時的にblood brain barrierの軽微な損傷が起こり、その結果生じた超微細出血によって変性・沈着したヘム鉄が神経細胞に変性を引き起こし、認知機能が低下するという仮説をたてた。本研究では超微細鉄定量化のために超高磁場ヒト用7 Tesla MRI(7TMRI)のQuantitative susceptibility mapping(QSM)を用いて、一側内頚動脈狭窄症に対する頚動脈内膜剥離術(CEA)後過灌流を呈した症例における術前後での鉄沈着を検出・定量し、認知機能低下との関連を検証する事を目的としている。これまでの先行研究にて用いられていた7TMRIのQSMは、磁化率差が大きい脳表部分の解析ができなかったが,脳表背景磁場を多項式近似した新たな推定法を利用 し,全脳の局所磁場を高精度に推定することで,脳表までの全脳QSM解析が可能となった。これにより,脳表の鉄沈着を評価することができるようになった。7TMRIでの撮像は可能であるが、マルチエコー法での画像では、画像の歪みが強くなる欠点が明らかになった。画像の歪みにより、導き出される結果にしたがって、7TMRIに比べ、歪みの少ない3TMRIでの撮像を行う事とした。3TMRIのQSM画像は現時点で65例を収集しており、目標の症例数は達成可能と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・7TMRIから3TMRIでの画像データを収集する事に方針を変更した事で方法論に変更を要したため。 ・COVID19感染症拡大のため、症例蓄積に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長した今年度は、70症例までのデータ集積・解析および成果発表を目標とする。統計解析としては、CEA後過灌流出現群と非出現群について、術前後でのQSM異常ボクセル数(鉄沈着の程度)の変化量を比較し、過灌流出現群の方が鉄沈着量が増加しているかどうか検証する。 次に、認知機能検査スコアが改善した群に比べ、不変または低下した群では、 QSM異常ボクセル数が増加しているかどうか検証する。さらに、脳血流が改善しているにもかかわらず、認知機能検査スコアが不変または低下した群では、脳血流と認知機能のどちらも改善した群に比べて、術前QSM異常ボクセル数が多いかどうかについても検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
目標症例数に達しておらず解析開始や論文作成が遅延しており、支出を予定していた英文校正や論文掲載料が執行できなかったため。また、COVID19感染症蔓延に伴い、情報収集や成果発表の旅費が執行できなかったため。
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