研究課題/領域番号 |
20K16739
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
谷 瞳 日本医科大学, 医学部, 助教 (20809636)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 乳房デジタルトモシンセシス |
研究実績の概要 |
本研究は、乳房デジタルトモシンセシス(digital breast tomosynthesis: DBT)から得られた合成2D画像(synthetic mammography: SM)の画像特性・診断精度を検証し、その臨床応用について検討することを目的としている。 2020年度はSIEMENS社製 MAMMOMAT Inspirationを用いた基礎的なファントム実験を行い、解像度・コントラスト・ノイズなどの画質評価による従来のデジタルマンモグラフィー(digital mammography: DM)とSMの特徴・違いを検証した。Polymethyl methacrylate (PMMA)ファントムに内蔵した0.2mmのアルミ片を模擬信号とし、PMMAファントム厚を20mm~70mmに変化させ、撮像した。得られたDMとSM画像それぞれにつき画質評価としてコントラストノイズ比(CNR: Contrast-Noise-Ratio)と、線量評価として平均乳腺線量(AGD: average glandular dose)を求めた。CNR、AGDのいずれで評価した場合でも、PMMA厚の変化に伴いDM撮影、SM撮影では同様の特性を示し、結果として両撮影方法は基礎実験での画質評価に差異を認めないことが確認された。 2021年度は同機器を用いた臨床検査において、石灰化を示す乳癌症例の検討を行い、DMとSMの比較を行った。具体的には、DM画像とSM画像を複数人が読影し、BI-RADSに基づいて石灰化の分布、形態、スコアを判定した。結果、ROC解析では、いずれの読影医もDBTにSMを加えた結果が、DM単独よりも高いAUCを示した。判定者間信頼性では、両撮影方法において石灰化の分布では中等度の、形態では高度の判定者間一致が得られました。石灰化の可視性スコアでは、SMではDMよりも有意に高く、DBTと同等であった。以上より、乳房の石灰化病変の検出力においてSMがDMと同等またはそれ以上の描出能が担保されていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度と来年度の目標は、臨床試験で乳腺密度、画像所見、組織学的所見の異なる乳癌症例を含めた検討を行い、DMとSMの比較を行うものである。本年度までの検討で、すでに乳房の石灰化病変の検出力においてSMがDMと同等またはそれ以上の描出能が担保されていることが明らかになっており、研究遂行のペースを堅持され研究計画通りに遂行できているものと考えている
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今後の研究の推進方策 |
来年度は本年度に引き続き、臨床診断の際の合成2D画像(SM)の画像的特徴や診断精度について、臨床試験にて詳細な検討を行う予定である。臨床試験では乳腺密度、画像所見、組織学的所見の異なる乳癌症例を含めた検討を行い、DMとSMの比較を行う。具体的には、撮像したDM画像と、DBTから作成されたSM画像を、乳腺画像診断を専門とする複数の放射線科医が読影し、読影基準に基づいた判定およびROC解析を用いた診断精度の評価を行ってゆく予定である。また、各病変の描出やノイズについても視覚的に比較する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は画像保存用ディスク、画像処理ソフトウェア、他消耗品等の今後の実験計画遂行に必須である購入予定物品等につき未購入であるため、次年度使用額が生じております。これらに関しては今後の実験計画の遂行に必要であり次年度以降に順次使用する予定となっております。また、今後の研究方向についての打ち合わせ、学会等での成果報告にも使用する予定としております。
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