本研究は、乳房デジタルトモシンセシス(digital breast tomosynthesis: DBT)から得られた合成2D画像(synthetic mammography: SM)の画像特性・診断精度を検証し、その臨床応用について検討することを目的としている。 2022年度は前年度に引き続き、乳癌の検出および可視性において、合成2D画像(synthetic mammography: SM)とデジタルマンモグラフィー(digital mammography: DM)画像を比較した。136例の組織学的に証明された乳癌患者のDBT画像から再構成されたSM画像とDM画像を比較し、乳癌の検出能力と可視性を評価した。結果、SM画像とDM画像の診断性能は同等であり、SMは石灰化乳癌(p <0.01)および密度の高い乳房組織(p <0.01)において有意に優れた可視性スコアを有していた。この結果よりSM画像が追加のDM画像の撮像を代替する可能性が示唆された。 また、本年度の新たな検討事項として、デジタル乳房断層撮影(DBT)画像で悪性所見を疑う軟部組織および石灰化病変を識別する深層学習人工知能(AI)システム(Transpara Ver.1.7.0)の性能を、経験豊富な放射線科医と比較した。エンドポイントは、経験豊富な放射線科医とAIの診断精度を比較することと、AIが放射線科医の業務負荷を改善するために役立つかどうかを評価することであった。DBTと対応するSM画像120例(正常53例、良性所見33例、悪性病変36例)の読影を行い、曲線下面積(AUC)と読影時間で比較した。通常の読影にAIを併用した場合の診断精度は放射線科医のみの場合と平均AUCで比較した場合、AIなしの0.961に対してAIありの0.958であり、有意な差は認めなかった。一方、読影時間は27.9%(p= 0.028)減少し、AIなしの168秒からAIありの121.15秒に有意に減少した。この結果から、AIは放射線科医の読影負荷を減らし、高い診断精度を実現できることが示唆された。
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