研究課題
末期腎不全に対する根治的治療は腎移植であるが、本邦においては移植腎が圧倒的に不足している現状である。移植成績を向上するために、移植腎の短期・長期予後に影響する虚血再灌流障害を理解することが重要である。虚血再灌流障害に関しては様々な要因が指摘されているものの、実際の発生部位、時期、詳細機序に関しては判然としていない。本研究においては、ラットの動物実験モデルを使用し、高感度造影剤および高分解能CT装置を用いて、虚血再灌流障害の血管障害部位を視覚的に特定し、さらに超高輝度蛍光ナノ粒子を用いて、障害因子の詳細検討を行うことを目的とした。手法としては下記(1)-(3)を計画した。(1)ビスマスを用いた造影剤の製。ラット腎を用いた微小血管CTイメージング。(2)摘出腎を使用した血管障害部位の画学的および血液流体学的解析。(3)超高感度蛍光ナノ粒子を用いた高感度病理学的解析。ビスマスは原子番号83と臨床で造影剤として使用されるヨード(原子番号53)より高いX線吸収値を有する。ビスマスを溶解することで、高感度CT造影剤として血管造影剤として使用する。この造影剤をラット腎に投与し、高分解能CT装置で撮影し、3次元構築した画像を元に血管障害部位の特定を試みる。また、摘出腎の血管径や抹消枝のCT値などから血管床の形態学的評価を行うとともに、実際の血流量を評価して機能的解析も試みる。腎モデルの保存条件を変えることで、虚血再灌流障害の差を比較検討する。最終的に、障害部位を病理切片として摘出し、免疫染色等により障害因子の観察を行う。
3: やや遅れている
本研究で使用するビスマス性造影剤は既に使用可能な状態である。ラットの血管に投与しEx vivoにより高分解能CT装置を用いて微小血管イメージングを施行した。この方法でCTを撮影すると、動脈に投与した場合は動脈造影となり、静脈に投与すると静脈造影として画像検出が可能であった。ラットの腎臓を摘出し、保存液であるユーロコリンズ液に冷保存した後、ex vivo CT imagingを施行した。これを摘出後0.3.6.12.24時間と条件を変えて施行した。k画像解析装置により3次元構築しすると、100µm程度の血管は認識可能であり、中枢~抹消の血管径や血管密度の違いを解析している。また、病理組織切片を作成し、血管構造の違いを解析している
引き続き、血管障害部位の詳細観察を構築した画像から行う。当初の計画である(2)-(3)を行う予定である。保存時間による血管構造の変化と紐づけることで、機能性および構造性障害のリンクを行う予定である。そして、血管障害部位を病理切片として摘出することで、病理学的評価を行う。病理学的評価に関しては、超高感度蛍光ナノ粒子を用い、より高感度に障害因子の検索を行う予定である。
疾病のため遅滞した。引き続き、既存のCT装置を用い、ラットやビスマス性造影剤を使いつつ得られているデータを解析する予定である。、
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日本臨床腎移植学会雑誌
巻: 10 ページ: 91-95