研究実績の概要 |
切除非適応骨軟部腫瘍に対する重粒子線治療は良好な治療成績が報告されている。しかし、その臨床報告は十分ではなく、群馬大学重粒子線医学センターにおける治療成績の解析を行った。結論としては切除非適応骨原発肉腫に対して重粒子線治療は根治的治療となりうるものであり、この解析に関して論文として学術誌に報告した。また、放射線治療後肉腫に対する重粒子線治療により長期生存を得た症例に関しても報告した。 今回、ヒト骨肉腫細胞のU2OSに異なる線エネルギー付与(LET)の重粒子線照射を行った。異なるLETで照射を行うことで細胞生残率や化学療法との増感割合が変わることに関してはヒト子宮頸がん細胞を用いて実験を行い、論文として学術誌に報告した。ヒト骨肉腫細胞のU2OSを用いた実験では、LETが13, 30, 50, 70kev/μmで相対的生物学的効果(RBE)がそれぞれ1.77,2.25, 2.72, 4.50と、実際の治療計画で用いているヒト唾液腺細胞(HSG)のRBE(LETが13, 30, 50, 70kev/μmでそれぞれ1.07, 1.61, 2.21, 2.74)より、高いLETになるにつれてその値が大きくなり、特に照射野中心となるLETが50keV/μmとその他のLETでのRBEが相対的に大きく異なることがわかった。 続いて、U2OSのRBE曲線を実験結果とHSGのRBE曲線を元にして作成し、重粒子線治療の線量分布作成システムにU2OSのRBEによる線量分布を反映させることに成功した。また、HSGによる線量分布とU2OSによる線量分布を線量体積ヒストグラム(DVH)を用いて比較を行った。その結果、線量分布とDVHパラメータの劣化を認め、特に線量分布均一性で劣化を認めた。この重粒子線治療におけるヒト骨肉腫細胞特異的RBEを用いた線量分布の変化の解析に関して論文として学術誌に報告した。
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