研究実績の概要 |
本研究では、乳癌患者に対し [F-18]FLT PET/CTおよび[F-18]FDG PET/CTを行い、両者を比較することで、[F-18]FLT PET/CTの乳癌症例における画像的特徴を明らかにすることを目的としている。 研究の2年目である2021年度には、前年度に設定した検査プロトコルを実施し、症例を集積した。現在までに8症例を登録した。4症例が術前病期診断を目的とした撮像で、いずれもネオアジュバント療法は行われていなかった。2症例は再発病変の活動性評価を目的に撮像された。2症例は多発転移の症例の活動性評価目的の撮像であった。8症例のうち7症例で[F-18]FDG PET/CTも施行されており、1症例は[F-18]FLT PET/CTのみの施行となった。 研究の3年目である2022年度には、8症例のデータについて論文発表を行った(Tomography 2022, 8, 2533-2546. https://doi.org/10.3390/tomography8050211)。検査前に治療介入がなかった患者6名においては、原発巣のSUVmaxは、18F-FLTと18F-FDGの間に有意差(平均2.1対4.1、p=0.031)と強い相関(r=0.969)を示した。さらに、腋窩リンパ節の SUVmax は 18F-FLT と 18F-FDG の間に有意差はなかったが(P = 0.246)、両者の間には強い相関関係があった(r = 0.999)。患者ごとの検討では、リンパ節と正常乳房で 18F-FDG の取り込みのみが観察されたケースがあり、18F-FLTの腫瘍への特異的集積が示唆された。一方で、18F-FLTの生理的集積の強い骨では、転移が正常骨髄よりも低い蓄積を示す場合があり、診断におけるピットフォールとなる可能性があった。
|