膵臓癌に対して放射線治療を行う場合、膵臓とその周辺臓器の呼吸性移動が問題となる。本邦において、最も用いられている呼吸性移動対策は息止め法である。 この場合、患者の腹壁に置いた体外マーカのみで息止め時の膵臓癌の位置再現性を担保する必要があるため、補償領域(マージン)の設定が必要であることが昨年度の研究から導かれた。一方で、膵臓癌の放射線治療では、病期分類に従って、治療計画が異なる。したがって、放射線治療前に撮影した位置確認用Cone-beam CTを用いた位置の合わせ込み(画像照合)にも放射線治療計画を反映すべきである。これらの観点から、今年度は腫瘍のみに対して位置照合を行う場合(GTV照合)と腫瘍とその周辺にある正常臓器も含めて位置照合を行う場合(PTV照合)の2群に分類し、それぞれの最適マージンを算出した。その結果、至適マージンサイズはPTV照合に比べてGTV照合の方が、前後、左右、頭足のすべてに対して大きくなった。また、昨年度に引き続きGTV照合とPTV照合においても観察者間変動を評価した。観察者群は、治療経験が中央値で3.5か月と10年という2群に分けた。この結果、PTV照合では、放射線治療経験年数が小さい群が大きく群に比べて有意に観察者変動が大きくなることを示した。さらに3か月後に同様の観察者変動を評価した結果、放射線治療経験による観察者変動に有意差はみられなかった。一方で、画像照合に有した時間は治療経験の短い群が長い群に比べて有意に延長した。 これらにより得られた研究結果をまとめ、Journal of Radiation Researchに論文投稿を行い、現在(4/25) minor revisionである。
|