研究課題/領域番号 |
20K16758
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
曽 菲比 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (50837680)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | PET/MRI / 減弱補正 / 深層学習 / in-phase Zero echo-time |
研究実績の概要 |
In-phase Zero echo-time (ipZTE)法によるMRIデータの収集を行うとともに、学習を行うためのCT画像の収集を過去のPET/CT症例を検索することにより行った。γ線吸収補正マップを作成するための偽CT生成のために、深層学習法の開発を行った。当初計画していたDeep Fuzzy C-means法では他の組織と区別して正確な骨の分離を行う事が困難であったため、教師なし学習の一つである、敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Networks)を用いることとした。従来の条件付き敵対的生成ネットワーク(conditional GAN)の発展型であるU-GAT-IT(Unsupervised Generative Attentional Networks with Adaptive Layer-Instance Normalization for Image-to-Image Translation)法を用いるとともに、異なる症例のipZTEとCTを学習することによる位置のずれや変形を補正するための識別子(Modality independent neighbourhood descriptor for multi-modal deformable registration)をcGANの損失関数(loss)の一つとして学習させた。対応のないipZTEとCTを効率よく学習させるために、すべてのipZTEおよびCTは背景信号(濃度)を半自動的に削除したデータセットとするとともに、ipZTEに関してはMRIで一般的にみられるスライス内の信号強度の不均一性を均一化するためのバイアス補正(N4ITK法)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度内におよそ330例のipZTEを撮像するとともに、同数の別症例のCTデータの収集を行った。深層学習モデルの構築のために、PyTorch版U-GAT-ITをpython上で構築するとともに、損失関数にMINDを組み込むコードを生成した。学習に用いたハードウェアとして、汎用ワークステーション(WS、Linux)にGraphics Processing Unit(GPU)を搭載したものを用いた。得られた症例のうち、300例を学習用(training data)とし、30例を試験用(test data)として用いた。多数のパラメータから至適値を求めるために、hyperparameter tuningを行ったとともに、得られた偽CTの画質、元のipZTEとの形態的な一致程度について、視覚的に評価を行った。至適パラメータで学習させたモデルを用い、test dataから偽CTを生成した。得られた偽CTの骨に関心領域を置き、同部の平均Hounsfield(HU)、ヒストグラムを測定した。Test dataでは同一症例のCTを用い、偽CTと同じ部位に関心領域を置き、HU値とヒストグラムを比較した。偽CTから得られる骨情報を抽出し、従来法であるMRIから生成される骨成分のない吸収補正マップに融合し、骨成分のある吸収補正マップを作成した。得られた吸収補正マップをPETの画像再構成に用い、従来法である骨のない吸収補正マップとその定量値について検討した。偽CTの骨における平均HU値やヒストグラムは従来法と比して、同一症例のCTと近似しており、また再構成されたPETにおける半定量値(Standardized uptake value, SUV)は従来法と比して、骨成分を有する領域あるいは骨に囲まれる領域の値が有意に高値であった。
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今後の研究の推進方策 |
今回学習に用いたipZTEは撮像に約5分を要し、PET/MRI検査における吸収補正マップ作製のための撮像時間としては比較的長いため、広く臨床応用し実用化するには障害が高いと言える。そこで撮像視野を狭める等により撮像時間をおよそ30秒まで短縮したipZTEの撮像を行うとともに、時間短縮により劣化した画質を補完するために、雑音抑制(noise reduction)のための深層学習モデルを使用し、30秒程度のipZTEから偽CT作成のために十分な画質を担保することを目標とする。これにより、胸部のみならず、全身の骨成分を有する吸収補正マップの作製が、実用的な撮像時間内で行うことが出来ると考えられる。 今回の深層学習モデルの作成にはipZTEを用いたが、従来法である2-point Dixon法(Dixon)を学習させ、偽CTを作成する方法も検討する。ipZTEの骨成分の信号強度はCTにおける濃度と逆相関されることが知られており、理想的には骨成分を有する偽CTの生成にはipZTEが適するとされているが、従来広く用いられ、簡便に得られるDixonを深層学習させることにより、骨成分を形成出来れば、臨床的有用性は高い。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初使用を予定していたWSおよびGPUが比較的安価に入手可能であったため、本来予定していた予算額よりも下回る費用で実行可能であった。しかしながら、8で述べた将来計画を実行するためには同時に別のWSおよびGPUを用いて学習させ、比較検討する必要があるため、次年度への使用とする。
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