本研究の目的は,細胞外pHが各種造影剤の固有緩和能に対してどのように関与するのか機序を明確にすることで,人体における細胞外pHマッピングの基礎的検討を完成し,細胞外pHマッピングの臨床応用への展開を目指していた.全体を通した成果として,ガドブドロールを使用した細胞外pHの算出について論文を一本投稿した.これは、QPM-MRI技術とガドブロール造影剤を使用し、脳腫瘍細胞外pHを算出するというものだ。この研究では、原発性脳腫瘍群は他の脳疾患群に比べ有意に高い緩和能r1値を示した(P<0.001).さらに,平均pHe値は,腫瘍の悪性度が低く,原発性脳腫瘍は他の脳疾患群に比べ有意に低い傾向を示した(P<0.001).この結果は,pHe脳腫瘍マッピングが腫瘍バイオマーカーとして機能することを示唆していると思われる.更に、臨床応用のために人工知能のフレームワークも作成した。これは、人工知能が自動的に細胞外pHの低下部位を検出するというものだ。しかし、これについては論文化はなされていない。
現段階の課題として、幅広い造影剤で検証されていないことが挙げられる。今回検証できた造影剤はガドブドロールのみである。そこで、最終年度では他の造影剤について詳細な検討を行うために準備を行った。その結果、他の造影剤についてもpH依存性が確認された。これはガブドロール造影剤と同様の結果である。しかし、pHに依存する緩和能特性は造影剤ごとに異なっており、さらなる検証が必要であると考える。これについては、2023年度科研費採択課題で詳細な検証を行う。
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