研究課題
非侵襲的に代謝物をイメージングする手法として、化学交換飽和移動法(Chemical Exchange Saturation Transfer:CEST)を利用したCEST-MRI法がある。CEST-MRI法を用いた脳内グリシン濃度分布を測定する方法(GlyCEST法)の確立を目指し、検討を行った。昨年度は既知濃度溶液ファントムを用いて、CEST-MRI法による代謝物イメージングの実現を目的とした撮像条件やデータ処理・解析の最適化を完了した。今年度は開発手法を生体(マウス)の測定に適用し、生体への技術応用およびその最適化を行った。生体の撮像では、生体への温度上昇作用(SAR)、即ち被写体が照射される電磁波により発熱する現象が生じる。SARの最小化のため、効率的なパルスシークエンスの開発を行った。また、生体の撮像では静磁場の空間的なズレが大きく、溶液ファントム実験と同様な撮像・解析法では画像化が困難となる場合がある。磁場不均一性の補正プログラムを最適化することにより、さらなる画像均一性の向上を図った。その結果、マウスでのGlyCESTイメージングの撮像が可能となった。これに加え、次年度での疾患モデルマウスでの測定に備え、正常マウス脳でのGlyCEST画像の作成および生化学的手法である高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography:HPLC)を用い、正常マウス脳の皮質、視床のグリシン濃度の定量測定を行った。
2: おおむね順調に進展している
当初予定されていた溶液ファントムでの基礎検討は完了し、生体(マウス)測定への技術応用は予定通り順調に進んでいる。
CEST-MRI法を用いた脳内グリシン濃度分布を測定する方法(GlyCEST法)の基礎検討を行い、撮像および解析の条件設定を完了した。本研究の目的である生体における脳内グリシン濃度分布の変化をモニタリング可能か、疾患モデルマウスを用いて検証し、最終的な結果をまとめる。
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