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2020 年度 実施状況報告書

歯科金属が陽子線治療の線量分布に与える影響の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K16775
研究機関一般財団法人脳神経疾患研究所

研究代表者

加藤 亮平  一般財団法人脳神経疾患研究所, 南東北がん陽子線治療センター, 研究員 (90867566)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード陽子線治療 / 放射化 / モンテカルロシミュレーション / 歯科金属
研究実績の概要

頭頸部癌、特に口腔癌に対する陽子線治療において、口腔内の歯科金属に陽子線が照射された場合、その線量分布は従来のX線治療よりも影響を強く受ける事が知られている。更に陽子線治療においては、高原子番号の金属は陽子線や二次中性子と核反応を起こし放射化する可能性がある。しかしながら、陽子線治療における歯科金属の放射化の影響は十分に明らかにされておらず、不明な点が多い。そこで本研究では歯科金属が陽子線治療の線量分布に与える影響を明らかにし、歯科金属の放射化を定量的に評価することを目的とした。
放射化の影響を解明する前に、歯科金属から予期せぬ長半減期核種が生成される可能性があるため、生成される放射性核種をモンテカルロシミュレーションにより推定する必要があった。そのために、令和2年度はモンテカルロシミュレーションを実施するための環境構築を行った。環境構築後は、本邦で一般的に用いられている歯科金属から生成される放射性核種をモンテカルロシミュレーションで同定を行った。シミュレーションの結果、歯科金属から生成された放射性核種は半減期が数時間程度のものが支配的であることが判明した。放射線管理の観点から問題ないと判断して実測を行い、歯科金属から放出されるガンマ線をゲルマニウム半導体検出器で計測した。その結果、シミュレーションで推定した放射性核種と同等なエネルギーピークを有することが確認された。また、これらのガンマ線による金属周囲への線量増加の影響を調査した結果、安全側に評価を行ったとしても処方線量に対しては十分低いことが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定通り、初年度は主にモンテカルロシミュレーションを行うための計算環境の構築を行った。モンテカルロ計算コードにはGeometry and Tracking 4 (Geant4)とParticle and Heavy Ion Transport code System (PHITS)を用いた。まず、当院の陽子線治療装置におけるビームラインのモデリングを行い、計算値と実測値の合わせこみを実施した。合わせ込みにより、実際の陽子線治療の線量分布を再現できるシミュレーション環境を構築した。その後は、歯科金属に陽子線を照射した際の線量分布の変化を実測する予定であったが、先行研究で同様のことが報告されていたため、歯科金属の放射化の影響を前倒しで検討することとした。放射化により歯科金属から放出されるガンマ線の線量分布を計算した結果、安全側に評価しても金属周囲の線量増加は処方線量に対して数パーセント程度であることが明らかになった。しかしながら、放射化によって放出されるのはガンマ線だけでなく、ベータ線や荷電粒子などの高LET放射線も放出されるため、これらの影響も加味して評価を行う必要がある。
以上のことから、全体としては当初の予定以上に進んでいる項目もあり、順調に推移していると判断できると考えられる。

今後の研究の推進方策

今後の研究は①放射性核種同定時の放射能の算出、②放射化の影響評価の高精度化について主に取り組んでいきたいと考えている。
①について、初年度の実測においては陽子線の照射量が少なく、ゲルマニウム半導体検出器におけるガンマ線の計測時間も短かったため、放射能の絶対量が評価できなかった。そのため照射量を増やし、計測時間を長くして歯科金属の放射能を算出することを予定している。この結果をモンテカルロシミュレーションと比較し、シミュレーションが実測を反映しているか確認を行うことを検討している。しかし、モンテカルロシミュレーションには膨大な計算時間がかかるため、新規ワークステーションの導入などで計算の高速化についても同時並行で行っていく。
②については、初年度に行った放射化による金属周囲の線量増加はガンマ線のみを考慮して評価を行った。しかしながら、放射化した金属からは、ガンマ線に加えてベータ線や高LET放射線なども放出される。そのため、これらの放射線の影響も加味して金属周囲の線量増加を評価することを予定している。このために線源をガンマ線源からラジオアイソトープ (放射性核種)線源に変更し、モンテカルロシミュレーションを実施する。ラジオアイソトープ線源としては、モンテカルロ計算コードに実装されているライブラリに存在している放射性核種しか扱うことができないため、ライブラリに存在しない放射性核種の影響の取り扱いについても検討していきたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの影響によって参加予定だった学会が延期や中止となり、旅費が不要になっため次年度使用額が生じた。モンテカルロ計算の更なる高速化に向けて、これらの費用を使用する予定である。

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公開日: 2021-12-27  

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