アルファ線は飛程が短く線エネルギー付与が高いため、標的アイソトープ治療において高い治療効果が期待できる。At-211はアルファ線標的アイソトープ治療核種の候補であり、治療効果の検証のため、薬剤の体内動態や臓器の被ばく線量の評価が不可欠である。本研究では、生体外部からAt-211を可視化するため、At-211の崩壊に伴うPo K-X線(77-92 keV)を計測するピンホール型X線カメラの開発を行った。 2020、2021年度は、検出器設計、試作と性能評価を実施した。検出器はモノリシック型NaI(Tl)シンチレータを選択し、マルチアノードPMT、ピンホール型コリメータで試作機を構成した。122 keVのガンマ線に対する検出器固有性能として、エネルギー分解能11.0%、空間分解能1.5 mmが得られ、有効視野内で良い一様性が確認できた。また、光センサをSiPMと電荷分割回路に置き換えて性能評価を行った結果、検出器固有空間分解能は1.3 mmでPMTと同等であった。従って、SiPMの利用と読み出し信号数の削減により、小型軽量、低電圧動作でコストの低い装置が実現可能と考えられる。 2022、2023年度は、X線イメージングカメラ試作機を利用してAt-211のイメージング試験を実施し、At-211を水に溶解した試料を計測して分布が得られることを確認した。コリメータから距離13 mmの試料に対して、空間分解能は1.6 mm、検出感度は101 cps/MBqであった。この結果から、距離25 mm以内の測定対象について、感度25 cps/MBq以上、空間分解能2.5 mm以下が達成可能な見込みである。本研究により、ピンホール型X線カメラがAt-211のイメージングに有用であり、シンプルな構成の検出器で高感度、高空間分解能が達成可能であることを示した。
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