研究課題/領域番号 |
20K16778
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
多胡 哲郎 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (50780649)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 放射性医薬品 / 核医学 / PET / HDAC6 |
研究実績の概要 |
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)ファミリーに属するHDAC6は、主に細胞質に局在している点や、ユビキチンに対する結合能を有している点などで特徴的なサブタイプである。近年の病理学的な研究から、HDAC6は脳内におけるタンパク質の異常凝集を特徴とする神経変性疾患の発症に深く関与していることが明らかとなった。そこで本研究では、陽電子断層撮像法(PET)用脳内HDAC6プローブの開発を目的として研究を行う。PETにより脳内のHDAC6をイメージングすることが出来れば、疾患発症におけるHDAC6の役割の解明や、HDAC6を標的とした新規治療法開発に応用できると考えられる。 本年度はHDAC6プローブである18F-標識テトラヒドロキノリン誘導体の標識合成法の確立を行った。標識体はボロン酸エステル前駆体と銅触媒を使用した18F-化とヒドロキサム酸化の2段階反応により合成した。反応条件検討で得られた知見を基に自動合成装置を使用して標識合成を行ったところ、目的物の18F-標識テトラヒドロキノリン誘導体が約5%の放射化学的収率で得られた。合成直後の比放射能は約2500 MBq/nmol、放射化学的純度は約96%であった。 生物学的評価に関して、18F-標識体とマウスを使用した体内分布試験や代謝解析試験を行った結果、18F-標識体の脳移行性が示唆され、またマウスの脳内における代謝安定性も高いことが明らかとなった。マウスにおけるインビボブロッキング試験の結果、18F-標識体の脳内集積はHDAC6選択的阻害剤の同時投与により減少したことから、18F-標識体は脳内のHDAC6に選択的に結合していることが示唆された。 以上の結果から、今回開発した18F-標識体はPET用脳内HDAC6イメージングプローブとして有望な性能を有していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
脳内のHDAC6をイメージングするためのPET用プローブを開発することを目的とした本研究課題において、今年度の目標は18F-標識化合物の合成法の確立と、標識体の基本的な生物学的評価を行うことであった。18F-標識体はボロン酸エステル前駆体と銅触媒を使用した18F-標識法を通じて合成し、結果生物学的評価を行うのに十分な放射化学的収率、純度で得られた。生物学的評価としては、18F-標識体を使用してマウスにおける体内分布試験や代謝解析試験を行えたことに加え、インビボブロッキング試験を行うことができた。結果、開発したプローブが脳内HDAC6イメージングプローブとして有望な性能を有しているおり、更なる研究を行う価値があると確認できた。以上の状況から、本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究を推進するにあたり、標識合成法の改善とプローブの構造最適化の二点を課題とし、より臨床的に有望なHDAC6プローブの開発を行う。標識合成法の改善に関し、本年度の研究において18F-標識化合物の合成法を確立することが出来たが、放射化学的収率は約5%と低い値であった。基礎研究を行うには十分な収率であると言えるが、複数人の被験者にPET薬剤を供給する臨床研究を見据え、より高い収率で目的物を得られる合成法を見出す必要がある。また構造最適化に関し、開発した18F-標識化合物の性能の課題として、血中からの放射能の消失が遅いことが挙げられる。そこで血中からの消失速度を速めることを目的に、化合物の脂溶性を下げる構造最適化を行い、生物学的評価を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの流行により、予定していた学会参加のキャンセルが生じたため。次年度使用額は主に学会参加費用として使用する。
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