令和5年度は前立腺の定量的磁化率画像の画質安定化を検討した.前立腺の定量的磁化率画像は前立腺の背側にある直腸内のガスや便によってアーチファクトが生じる.研究を進めた結果,骨盤内の脂肪によってもアーチファクトが出現していることが分かった.そこで新たな前立腺の定量的磁化率画像を再構成するための手法を開発し,その評価を行った.従来の手法と比べてアーチファクトによる磁化率画像内のアーチファクトが減少し,定量値も正確になった.現在,本結果は論文にまとめて投稿する準備をしている. 本研究は前立腺癌のMR単独放射線治療計画における定量的磁化率画像を利用した画像誘導放射線治療法の確立および,画像誘導放射線治療のために石灰化を描出できる定量的磁化率画像の再構成法の開発を行うことを目的とした.定量的磁化率画像を用いて描出した石灰化の描出能や体積をCTと比較した結果,描出能と体積ともにほぼ一致した.さらに疑似CT撮影時に得られた水と脂肪画像およびグラディエントエコー法で得られた位相画像を使って磁化率画像を計算した結果,CTと同じように石灰化を描出できることが分かり,前立腺内の石灰化をMR単独放射線治療計画の画像誘導放射線治療に用いることできると分かった.一方,2つの撮影法を利用しているので,グラディエントエコー法のみから計算するほうが望ましい.そのため直腸内のガスや便などから生じるアーチファクトを低減しながら,単一の撮影シーケンスから定量的磁化率画像の再構成法の開発を行った.具体的には自動的に解析領域から直腸やその他のアーチファクトの発生源となる部位を除く手法や各エコー時間の合成方法などの開発した.本手法は前立腺以外の体幹部の定量的磁化率画像にも応用可能である.この成果は現在論文にて報告する準備をしている.以上のように本研究の目的は達せられ,今後前立腺癌へのMR単独放射線治療への応用が望まれる.
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