本研究はIrreversible electroporation(以下IRE)と呼ばれる、経皮的に電極針を挿入し通電する技術の、深部膿瘍に対する有用性を検討する研究である。IREはこれまで局所進行膵癌や肝細胞癌で治療応用され、今後はその他の悪性腫瘍について応用が期待されている。肺の難治性膿瘍に対しラジオ波焼却療法が報告されており、本研究では深部膿瘍(肝膿瘍)を有するマウスを用いて前述の有用性について検討した。培地上の細菌に対する殺菌効果の最適なIREパラメーター〈電圧(voltage)・通電時間(us)・通電間隔(s)・通電回数〉を設定した。黄色ブドウ球菌を混入した培地の一部をマウスの皮下に注射し、マウス皮下膿瘍モデルを作成した。培地を用いた実験により得られたIREパラメーターで 皮下膿瘍に対し通電し、殺菌効果について検討した。また、膿瘍腔周囲の正常皮膚、皮下組織の壊死の有無も併せて評価した。当初の予定では黄色ブドウ球菌を混入した培地の一部を肝内に移植し、肝膿瘍モデルも作成し、同じく殺菌効果を確認する予定であったが、進捗状況の遅れにより現時点で実験出来ていない。研究期間を通じて、腹部画像診断に関する英文原著論文1本、総説2本、日本語総説1本、学会発表2本を行った。また、研究とは直接の関連には乏しいが、最終年度に肝疾患、胆道疾患に関する書籍の執筆に携わった。本年度は消耗品や学会参加費、関連書籍、研究備品等に助成金を使用した。
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