肝細胞癌に対する肝動脈化学塞栓療法(TACE)は代表的なInterventional Radiology (IVR)治療法の一つであり、標準治療として以前から広く行われている。また近年、新規Tyrosine kinase inhibitor (TKI) であるレンバチニブが承認され、これまでの分子標的薬と異なり高い奏効率を示すことから肝細胞癌に対する標準治療として注目を集めている。申請者はこれまで、薬剤溶出性ビーズへの抗癌剤の含浸に関する基礎研究を行ってきた。抗癌剤含浸ビーズを用いたDrug eluting beads-TACE (DEB-TACE) は、ビーズの徐放性により腫瘍内の抗癌剤濃度を高めることができ、現在も臨床で広く行われている。レンバチニブを薬剤溶出性ビーズに含浸させ、肝細胞癌に効率良く投与できれば、さらなる強い抗腫瘍効果が期待できる。本研究では、in vitroでレンバチニブの薬剤溶出性ビーズへの含浸の程度および溶出速度を、in vivoでレンバチニブ含浸ビーズの薬物動態と抗腫瘍効果を評価する。 in vitro実験において、膨潤の機序で薬剤を含浸するヘパスフィアの薬剤含浸量はさほど多くないため、抗腫瘍効果を得るために必要な薬剤溶出量が得られない可能性がある。よって、イオン結合で薬剤を含浸する他の種類の薬剤溶出性ビーズを用いる方針とした。また、生体適合性・生体内可溶性を有するハイドロゲルを用いて、レンバチニブを肝腫瘍モデルの肝腫瘍組織に経動脈的に投与する方法も模索中である。 in vivo実験において、ラットおよびウサギ肝腫瘍モデルの作成と肝動脈から選択的TACEを行うカテーテル手技を確立した。
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