研究課題/領域番号 |
20K16801
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小池 直義 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60464913)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 放射線心毒性 / 細胞骨格 |
研究実績の概要 |
技術の進捗、併用薬剤の進化に伴って放射線治療で肺がん、食道がんを含む胸部悪性腫瘍は根治可能な疾患となりつつある。長期生存が達成されることで、新たに顕在化した問題として胸部放射線治療による晩発性の心毒性がある。放射線誘発性の心毒性発症のメカニズムは不明な点が多く、予防法や根本的治療法は確立されていない。本研究では放射線による心毒性のメカニズムの解明と治療法の探索を目標としている。 まず、マウスの心臓に放射線照射を行い経時的変化を観察したところ、心臓の病理学的変化として大動脈弁の肥厚と線維化、筋線維芽細胞の出現していることが明らかになった。大動脈弁の肥厚と線維化が放射線による心毒性の一因であることが示唆された。そこで、ヒト心弁膜線維芽細胞にin vitroで照射を行い観察をしたところ、弁膜線維芽細胞がα-SMA陽性の筋線維芽細胞へと変形することを同定した。ヒト心弁膜線維芽細胞にRhoキナーゼ阻害剤であるファスジルを投与下に放射線照射を行ったところα-SMA陽性である筋線維芽細胞の出現が低下したことを確認した。 次にヒト弁膜線維芽細胞の照射後のmRNA発現をq-PCRで確認した。照射により、線維化に関与するコラーゲンやファイブロネクチンのmRNA発現が上昇し、その上昇はファスジル投与で低下することが判明した。 ファスジルが心毒性の軽減効果を有するかの確認のために、マウスの心臓に放射線照射を行い、PBS投与群とファスジル投与群にわけて経過を観察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitroの系では順調に推移している。in vivoの系で薬剤が心毒性を軽減する効果があるかを現在検証中である。
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今後の研究の推進方策 |
in vivoの系でのファスジルの心毒性軽減効果を検討する。照射による心臓への影響を心弁膜以外の心筋、冠動脈、心外膜にも注目して解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会への現地参加がなくなったため、旅費はかからなかった。その他の未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。未使用額は翌年度の動物実験、組織染色検査に充当する予定である。
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