本研究の目的は、肝臓そのものがヒトの肝臓に取って代わるヒト化肝臓マウスを用いた、人に近い肝臓機能や疾患の評価することである。具体的には高磁場MRIを始めとした、イメージングデバイスにより、 臨床では時間的制限や装置性能から得ることが難しい、分子レベルの高分解能マイクロイメージングにより、細胞変性や浸潤、脂肪酸やグリコーゲンの代謝や分布、トランスポーターを介したビリルビンの排泄機能などを、 実際に肝組織を染色した標本と比較し、イメージングバイオマーカーを確立することである。 最終年度として、これまでに確立した撮像シークエンス、またプロトコールを用いて、ヒト化肝臓マウスに対して撮像を行った。具体的には、T1、T2強調画像により形態の差異や、T2値の延長などを調査した。さらに拡散強調画像により、肝細胞組織の組成や構造の変化に伴う拡散情報の変化を調査した。さらにその肝臓標本をさらに詳細に高解像度MRI撮像を行い、ヒト肝細胞を移植されたマウス肝構造の詳細を明らかにした。その結果、ヒト化されたマウスの肝臓は、正常マウスの肝臓とは大きく異なり、肝硬変などで見られる不正な形態を呈し、さらにびまん性の炎症様のT2の延長が見られた。拡散強調画像においては、ヒト化肝臓で見かけの拡散係数が上昇しており、炎症などによる水の影響が考えられる。拡散の異方性を示すFractional anisotropyでは、正常マウスと大きな差は見られなかった。結果、ヒト化肝臓マウスの肝臓は、ヒトそしてマウスの肝臓とも異なっており、ヒトとの相同性をイメージング研究で明らかにすることは現状では難しい。しかし、ヒト化肝臓マウスを対象とした初めてのイメージング研究として、ヒト化肝臓の詳細を明らかにすることができた。
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