研究課題/領域番号 |
20K16809
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
三浦 太一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線規制科学研究部, 主任研究員 (30803209)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 腸管オルガノイド / 放射線治療 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
放射線腸管障害は放射線がん治療だけでなく、被ばく事故においても早急に解決すべき重要な課題である。我々はこれまで増殖因子、糖鎖、薬剤等を投与することで放射線腸管障害を防護・再生できることを示してきた。これらは一定の治療効果を示すが、実際の高線量被ばく時の腸管障害を考慮すると十分な治療効果とは言えない。本研究は外部で作成した腸管組織「腸管オルガノイド」を、放射線腸管障害部位に移植することで、放射線照射に起因して失われた腸管構造の再構築を目指す。昨年度では、γ線をSCIDマウスに照射後2~3時間以内にヒト腸管オルガノイド片を、マトリゲルを用いて移植したが、腸管への生着は認められなかった。今年度は、腸管オルガノイドの投与条件の検討を行った。γ線をマウスに照射後、経時的に腸管の組織学的解析を実施し、上皮の構造がもっとも崩壊する時期を決定した。崩壊した場所を足場に腸管オルガノイド片が生着すると仮定し、崩壊が最大となる時期に腸管オルガノイド片を移植した。その結果、いくつか生着した細胞は見受けられたが、それは一時的なものであり、組織の再構築に寄与することはなかった。 腸管を構成する細胞群に間質細胞があり、腸管の恒常性維持などに寄与している。そこで、腸管オルガノイド片と一緒に、ヒト由来の間質細胞を放射線腸管障害モデルマウスに投与した結果、腸管オルガノイドの生着は依然として認められなかったが、間質細胞の生着が認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
うまくいかない場合も想定の範囲内であったため、ほぼ計画通りに実施できた。
|
今後の研究の推進方策 |
・腸管オルガノイドからLgr5陽性細胞(腸管幹細胞)を単離して、これの放射線腸管障害モデルマウスへの投与実験を実施する。 ・ヒト間質細胞の放射線腸管障害部位への生着に関する再現実験を実施するとともに、その治療効果の有無についても検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
解析に想定以上に時間を要したため、予定していた実験に用いる試薬やマウスの購入を次年度に繰り越すことになった。
|