放射線治療では、がん細胞にDNA損傷を生じ死滅させる。また、細胞死が生じる際に抗腫瘍免疫も活性化させることが知られている。そのため、免疫チェックポイント阻害剤と放射線治療の併用により、相乗的な治療効果が得られることが報告されている。しかし、抗腫瘍免疫において重要な役割を持つ免疫細胞は一般的にがん細胞に比べて放射線に対する耐性が低く、放射線は腫瘍組織内の免疫細胞を死滅させてしまう可能性がある。そのため、これらの併用を考える上で免疫活性のタイミングを適切に捉えることが重要である。 免疫チェックポイント阻害剤は、腫瘍内に存在するT細胞を活性化する。活性化したT細胞が、がん細胞を攻撃することで腫瘍が縮小する。この時、T細胞の活性化に伴い、腫瘍内代謝も大きく変わることが知られており、この変化をPET (positron emission tomography)によるイメージング技術を用いて評価することで、免疫活性のタイミングを捉えることができると考えられている。 2022年度は、抗PD1抗体を投与したマウスで上昇が予想されるサイトカイン群ががん細胞に与える影響を評価した。その結果、一部のサイトカインを処理したがん細胞では細胞周期が変動しG2/M期が増加することから、細胞増殖PETイメージング剤である[18F]FLTを取り込みやすくなる可能性が示唆された。また放射線を照射されたがん細胞においても同様にG2/M期が増加することから、より[18F]FLTの集積が増加することが予測された。
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