2022年度は、(1)微分ヒストグラムの応用と(2)新たな機能-線量指標の創出に着手した。 まず、線量-微分型ヒストグラムを機械学習に導入することで放射線誘発性肺炎の予測能を強化した。線量-微分型ヒストグラムはmulticollinearity (多重共線性)の回避が可能である。結果は、線量-微分型ヒストグラムの指標を追加したモデルは線量-積分型ヒストグラムのみから構築したモデルと比較して予測能に優れていた。さらに、LASSOの回帰係数から各特徴量の放射線誘発性肺炎の発生に対する寄与の度合いを解析した。放射線誘発性肺炎の発生に寄与が大きい特徴量は積分ヒストグラムでは60Gy以上が照射される肺体積、微分ヒストグラムでは20Gy-30Gyが照射される肺体積であった。微分ヒストグラム型の指標は生物効果を評価する際に活用されており、本研究のように機械学習と組み合わせた研究の発展が期待される。課題として症例群は複数の異なる照射方法で治療を受けた症例が混在しており、個別の解析が望まれることである。 続いて、multicollinearityを回避するための、機械学習に特化した機能-線量指標を創出した。既存法は、肺機能値に下限カットオフを設定して計算されているが、我々は下限および上限カットオフを設定して計算する機能-線量指標を提案した。この新たな機能-線量指標では、特徴量間の相互相関係数を大幅に低減し、multicollinearityを解消できた。機新たな機能-線量指標の恩恵は、LASSO法およびサポートベクターマシン法を用いた二重交差検証(nested-cross-validation)で調査した。いずれの方法でもAUC値を大幅に改善する予測モデルを構築でき、LASSO法ではAUC>0.8を超える予測モデルを構築できた。2022年度の成果は論文掲載(2編)に報告した。
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