本課題の目的は、放射線治療時における肺形態の被ばく指標と肺機能の被ばく指標を機械学習で融合させ、既存法と比較して優れた肺炎予測能を有するモデルを構築することである。2020年度~2022年度の期間では種々の機械学習技法のうち、サポートベクトルマシン法およびランダムフォレスト法を活用して予測モデルを構築した。いずれのモデルも既存法を超える予測能の構築できた。更なる予測能の向上を図るため、(1)微分ヒストグラムの応用と(2)新たな機能-線量指標の創出に着手した。線量-微分型ヒストグラムはmulticollinearity (多重共線性)の回避が可能である。結果は、線量-微分型ヒストグラムの指標を追加したモデルは線量-積分型ヒストグラムのみから構築したモデルと比較して予測能に優れていた。さらに、LASSOの回帰係数から各特徴量の放射線誘発性肺炎の発生に対する寄与の度合いを解析した。微分ヒストグラム型の指標は生物効果を評価する際に活用されており、本研究のように機械学習と組み合わせた研究の発展が期待される。課題として症例群は複数の異なる照射方法で治療を受けた症例が混在しており、個別の解析が望まれることである。続いて、multicollinearityを回避するための、機械学習に特化した機能-線量指標を創出した。新たな機能-線量指標では、特徴量間の相互相関係数を大幅に低減し、multicollinearityを解消できた。2023年度は新たに症例を追加して、我々の機能-線量指標の恩恵を調査した。LASSO法およびサポートベクターマシン法を対象とした二重交差検証(nested-cross-validation)では、臨床使用が期待される予測性能を示した。また、本課題で開発した技術の一部を特許申請した。
|