本研究の目的は、4D-flow MRIを用いて妊婦の子宮動脈を評価し、その有効性と有用性について検討することである。4D-flow 解析に必要なソフトの共同購入や子宮動脈の4D-flow MRIの撮影プロトコルを作成し、成人女性のボランティアで研究遂行が可能であることを確認した。同時に当研究施設における研究実施計画書を作成し、倫理審査承認後に4D-flow MRIの撮影を開始した。 対象は妊娠中にMRI検査が予定され、同意が得られた患者を撮影した。子宮動脈の描出の程度を評価し、対象となる動脈の血流波形(収縮期と拡張期の血流速度cm/s、血流量mL/min、抵抗係数resistance index: RI、拍動係数pulsatility index: PI)を計測した。コントロール群とHDP・癒着胎盤群間における血流波形や動脈血流量等について統計解析を行った。 期間中3症例の子宮動脈を4D-flowで撮影することができた。解析にて、妊婦の子宮動脈の描出パターンは、妊婦ではない通常の成人女性に比較し、明らかに拡張し血流が増加していることが4D-flow MRIで確認された。また、大動脈等と比較し、子宮動脈は拡張期でも高速血流が維持されているのが視覚的に確認可能であった。これは、正常妊婦の超音波で確認される、子宮動脈血流波形における拡張末期血流速度の上昇と同様の現象を反映する所見と考えられた。本研究の概要について、2022年9月に行われた国内学会JSAWIで発表したところ、優秀賞を受賞した。 研究期間中に当研究の概要について産婦人科カンファレンスについて紹介し、症例収集の協力をお願いしたが、3テスラ装置における妊婦の撮影の安全性に懸念があるとのことで、症例を集めることが困難であった。今後も研究継続可能性について産婦人科と協議する予定である。
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