2021年度までの研究成果で新生児においても肺超音波検査(lung ultrasound:LUS)スコアの活用が有用であることを確認し、新生児集中治療の現場におけるさらなるLUSスコアの活用法を模索した。その一つとして、生後に呼吸障害を伴う症例に肺超音波検査を行い、サーファクタント投与を予測するためのLUSスコアの有用性を検討した。 2021年3月から2022年7月までに当院に入院し、入院時に呼吸障害を有する在胎37週未満の早産児77例を対象に前方視的研究を行った。マイクロバブルテスト・胸部X線検査および臨床症状から呼吸窮迫症候群と診断し、呼吸窮迫症状を伴う症例にサーファクタントを投与した。左右の前上胸部・前下胸部・側胸部の合計6か所で肺超音波検査を行い、「Aライン」「Bライン」「white lung」「consolidation」の所見に基づき0~3点でスコアリングし、症例毎に合計0~18点のLUSスコアを算出した。 LUSスコアによるサーファクタント投与はAUC(area under the curve)0.971(95%信頼区間0.937~1)で予測可能であり、カットオフ9点で感度85%、特異度96%、陽性的中率92%、陰性的中率93%であり、LUSスコアはサーファクタント投与の予測にも有用であることを明らかにした。 研究期間全体を通して、肺超音波検査の所見であるConsolidationパターン内部で認める抵抗係数・拍動係数・加速時間から病態を見出すことはできなかった。しかしLUSスコアを病態把握や治療介入に応用可能であることを見出した。このことは肺超音波検査がまだあまり普及していない本邦新生児医療の現場にとっては重要な知見であると考える。
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