研究課題/領域番号 |
20K16844
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
市野井 那津子 日本大学, 医学部, 専修指導医 (40509402)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シトルリン / シスチン / システイン / ATP / ノックアウトマウス / 黄疸 / 肝炎 |
研究実績の概要 |
シトリン欠損症は、血中シトルリン上昇と胆汁うっ滞、肝炎症状を特徴とする、“シトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞”(以下NICCD)という病型を新生児期~乳児期に呈する。幼児期~小児期、思春期~成人期にはそれぞれNICCDと異なる症状を呈し、またその重症度も患者により異なるが、その差異に関連する因子や詳細な病態は未解明である。本研究では、NICCDの病態解明を目的とした。 本疾患の欠損タンパクであるシトリンは、ミトコンドリア膜に存在し、ミトコンドリア内外のアミノ酸やニコチン酸アミドの輸送に携わっている。我々は、シトリン蛋白の欠損による、輸送アミノ酸の不足とそれに起因するミトコンドリア機能障害がNICCDの主な病因であると仮説を立てた。シトリン蛋白を欠損させた既存の遺伝子改変マウスを用いて、組織学的変化やミトコンドリア機能の評価を行う。シトリン欠損マウスに特殊飼料を与えることにより、代謝上の負荷をかけることを想定しており、通常飼料群と特殊飼料群間の表現型の差異の有無を検討する。 令和3年度は、主にシトリン欠損マウスの表現型解析を行った。野生型、ヘテロ型、変異型それぞれの遺伝子型マウスの体重推移、外観の観察や、血液検体で血糖、肝逸脱酵素、アミノ酸分析などを行った。また、欠損タンパクであるシトリンが、肝内へシステインの代謝産物を輸送することから、システインを減量した飼料をシトリン欠損マウスに与え、体重推移等を確認した。結果、通常の飼料を与えた場合と、システイン減量飼料を与えた場合に、有意な体重変化や外観上の差異、血液検査データは現時点で認めていない。通常の飼料と同等のアミノ酸を含んだ飼料を与えた際の表現型解析を現在進めている。 また、より深い疾患理解のために、小児期に初めて本症と診断された症例の学会発表を行うとともに、その論文作成を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シトリン欠損マウスの繁殖維持は順調に行えている。通常飼料およびシステイン減量飼料を与えた際の表現型解析、生化学的検査は、おおむね終了している。組織学的解析は、開始したばかりで実施数が少なく、現時点で進捗不十分であるが、計画通り令和4年度内に行い、終了予定である。通常飼料または特殊飼料を与えた群それぞれの肝組織像の解析を今後進める。 シトリン欠損マウスの細胞を用いたミトコンドリア機能解析により、本疾患のミトコンドリア機能障害の有無を明らかにする。本研究では、シトリン欠損マウスに特殊飼料を与えることにより、代謝上の負荷をかけることを想定しており、ストレス下でのミトコンドリア機能を評価する。ミトコンドリア機能解析がうまくいかない場合、学内の他研究室や他研究施設への協力依頼を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
システイン減量飼料のみでなく、通常飼料と同等のアミノ酸含有飼料を用いて、各遺伝子型群間の、体格の差異の確認や生化学的データ収集を行う。 シトリン欠損マウスの肝細胞を用いたミトコンドリア機能解析により、本疾患のミトコンドリア機能障害の有無を明らかにする。組織内ATP量の測定および、組織学的評価によって、ミトコンドリア機能を評価する。ミトコンドリア機能解析がうまくいかない場合、学内の他研究室や他研究施設への協力依頼を検討する。
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