申請者らが2018年に世界に先駆けて報告したガラクトースムタロターゼ欠損症は、ガラクトース代謝経路においてガラクトースムタロターゼの機能低下を原因とする先天代謝異常症である。2018年に新たに発見された疾患群であるため、ガラクトースムタロターゼ欠損症の詳細な臨床像については明らかになっていないが、ガラクトースムタロターゼ欠損症においても他のガラクトース血症と同様に白内障を来した症例が報告されている。ガラクトース代謝経路における代謝酵素をコードする遺伝子においては、病的バリアントのヘテロ接合体である保因者であったとしても、白内障のリスク上昇に寄与している可能性を示唆する報告がある。そこで本研究において、GALM遺伝子を含むガラクトース血症の保因者が、若年性白内障のリスク上昇と関連しうるかどうかを検討した。バイオリソースから若年性白内障の症例のDNAサンプルを取得し、ガラクトースムタロターゼ欠損症を含むガラクトース高値を来しうる遺伝性疾患の遺伝子パネル解析を行った。しかし、若年性白内障症例においてガラクトース高値を示す遺伝性疾患の保因者が公共ゲノムデータベースと比較して有意に多いという結果は得られなかった。今後は本研究で開発された遺伝子パネル解析を用いて、白内障症例の中でも今回対象とした若年性と分類される集団よりもさらに高齢発症または若年発症といった異なる母集団を対象にした研究が期待される。
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