研究課題
原尿は腎糸球体の血管内皮、基底膜、糸球体上皮細胞(ポドサイト)からなる濾過障壁を透過して生成される。高度蛋白尿を呈するネフローゼ症候群では、原尿生成の過程で濾過障壁を主として担うポドサイトの微細な足突起の突起構造が保たれず癒合している。小児に多い微小変化型ネフローゼ症候群では、ポドサイトの足突起構造の形態変化は可逆的であり、治療により回復することが病理学的に明らかとなっている。本研究では、ポドサイトに特異的に発現する転写因子WT1の上流にEGFPを発現するよう遺伝子改変したマウス(WT1-RGマウス)を用いて、ポドサイト足突起形態の維持、形態障害後の修復過程における分子制御機構を解明し、ポドサイト障害に起因する蛋白尿に対する新規薬剤の開発を目指している。2021年度は、WT1-RGマウスを用いて薬剤誘導性のネフローゼモデルマウスを作成する予定であったが、2回の緊急事態宣言を受け、本学動物実験センターの稼働を必要最小限にする必要が生じ新規マウス実験の開始が著しく困難であったが、マウス代謝ケージの設置など環境面の整備を進めた。その一方で培養ポドサイトを用いたin vitroでの解析を進めた。Bristol大学M.Saleem博士らが確立したヒト培養ポドサイトを入手し、ポドサイト特異的なWt1、Podocin、CD2APなどの発現が見られることを確認することができた。
3: やや遅れている
2020年度は4月から6月と1月から3月の緊急事態宣言のため、所属施設の動物実験センターのマウス繁殖を差し控える必要があったため、当初の実験計画通りにマウスを用いた動物実験を進めることが非常に困難であった。そこで、培養細胞を用いた実験系でWT1の発現解析やフローサイトメータやDNA/RNAシーケンサーを用いた実験を進めることができた。またこれまでにマウスの代謝ケージの設営、培養細胞を用いたパイロット研究を進めるなど、一定程度進展があったと考えている。
2021年度は、Covid19感染拡大などの社会的状況により動物実験への支障が生じなければ当初の予定通り、WT1-RGマウスを用いて薬剤誘導ネフローゼモデルマウスの作成とポドサイトの形態変化が生じた際のポドサイトのmRNA発現の継時的観察やポドサイト特異的蛋白発現の変化、あるいは培養ポドサイトのmRNAや蛋白発現解析を進める方針である。
Covid19の感染流行が原因で、動物実験センターの使用著しい制限がかかってしまい当初の予定どおりのマウス実験を進めることができなかったため、当初の予定よりも研究資金に残金が生じた。2021年度にCOvid19感染拡大などの社会的要因がなければ計画的に当初予定していた実験を進めたい
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Kidney360
巻: 2021 ページ: 487-493
10.34067/KID.0004432020
Journal of Cell Science
巻: 133 ページ: jcs242859
10.1242/jcs.242859