研究課題
原尿は腎糸球体の血管内皮、基底膜、ポドサイトからなる濾過障壁を透過して生成される。高度蛋白尿を呈するネフローゼ症候群では、原尿生成の過程で濾過障壁を主として担うポドサイトの微細な足突起の突起構造が保たれず癒合している。小児に多い微小変化型ネフローゼ症候群では、ポドサイトの足突起構造の形態変化は可逆的であり、治療により回復することが病理学的に明らかである。本研究では、ポドサイトに特異的に発現する転写因子WT1の上流にEGFP-mCherryを発現するよう遺伝子改変した(WT1-RG)マウスを用いて、ポドサイト足突起形態の維持、形態障害後の修復過程における分子制御機構を解明し、ポドサイト障害に起因する蛋白尿に対する新規薬剤の開発を目指した。コロナ禍で動物実験が全く進まなかった。過去の報告通り2021年度の終わり頃よりWT1-RGの繁殖が軌道に乗った。2022年度は当初、遺伝子改変マウスの繁殖に成功し、計画通りにネフローゼ症候群を誘導する抗UCHL1抗体を購入し、マウスへの投与の準備を進めた。また血清や細胞を用いフローサイトメトリーの実験系の確立を進めた。しかし、年度途中に所属大学から他施設への異動となり繁殖したWT1-RGマウスの系統は閉じ、目標の研究は十分になし得えず、残念であった。一方、WT1遺伝子のZinc finger domainに異常のあるステロイド抵抗性ネフローゼ症候群患者の腎切片で、腎糸球体でWT1の蛋白発現量と局在の変化を、対照群と比較した検討でWT1の局在異常と発現量変化を見出した。さらに不死化胎児腎細胞を用いて、強制発現した野生株WT1と患者変異WT1を導入すると、細胞内WT1局在変化とWT1の下流遺伝子群は有意に発現量が低下した。上述のモデルマウスを用いて生体内でこの現象についての検討も考慮したが同様の理由により目標とした検討を十分行えなかった。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件)
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