研究課題
大脳皮質は高次脳機能の中枢であり、脳神経系のなかでも特に重要である。高等哺乳動物の大脳皮質は肥大化しており、また表面にはシワ(脳回)が存在するなど発達しており、高次脳機能の基盤となっている。我々の研究室では、最近、発達した大脳皮質を持つ哺乳動物フェレットを用いて、脳回形成にFGFシグナルが重要であることを世界に先駆けて見出した。そこで本研究ではフェレットとFGFを突破口として、高等哺乳動物に特徴的な大脳皮質の特性やその異常疾患病態の解明を行う。FGF受容体の下流で活性化するシグナルを検討するために、フェレット大脳皮質の切片を作成し、免疫組織染色およびin situ hybridization法を用いて解析している。MAPK経路の活性化にはリン酸化MAPK抗体と Sproutyプローブ、AKT経路の活性化にはリン酸化AKT抗体とリン酸化S6K抗体を用いている。さらにMAPK経路やAKT経路の活性化がFGFシグナルによるものか検討するために、研究室の遺伝子導入技術を用いて優性不能型FGF受容体をフェレット大脳皮質へ導入し免疫組織染色で解析している。MAPK経路およびAKT経路が活性化している細胞種を特定するために、大脳皮質の切片を作製し、RG細胞、oRG細胞数(Pax6 陽性 Tbr2 陰性)、IP細胞(Tbr2陽性)などの神経前駆細胞ごとの活性化を検討することにより、MAPK経路およびAKT経路の役割分担を明らかにする。
2: おおむね順調に進展している
コロナ禍でフェレットの入荷の遅れが生じたが、研究室に保存してあったフェレットのサンプルを使うことにより順調に実験が進展した。切片を作成し、様々な染色が進行中である。
大脳皮質形成のどの時期にFGFが重要であるか検討する。タモキシフェンとERT2-Creを用いて、フェレット大脳皮質でのFGFの発現誘導時期を制御し、大脳皮質の肥大化や脳回形成に影響が出る時期を検討する。FGFが重要であることがわかった時期の大脳皮質の切片を作製し、RG細胞、oRG細胞数(Pax6 陽性 Tbr2 陰性)、IP細胞(Tbr2陽性)などの神経前駆細胞ごとの活性化を検討する。さらに細胞分裂マーカーKi-67やリン酸化ヒストンH3、アポトーシスマーカーcleaved caspase 3を免疫組織染色で解析することにより、MAPK経路およびAKT経路の役割分担を明らかにする。
コロナ禍で、実験動物フェレットの入手が困難であったため、次年度使用額が生じた。現在は比較的フェレットの供給は安定しており、円滑に実験を進める予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Scientific Reports
ページ: in press
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http://square.umin.ac.jp/top/kawasaki-lab/