研究課題/領域番号 |
20K16849
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
水口 敬司 金沢大学, 附属病院, 臨床検査技師 (40844345)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大脳皮質 |
研究実績の概要 |
大脳皮質は高次脳機能の中枢であり、脳神経系のなかでも特に重要である。高等哺乳動物の大脳皮質は肥大化しており、また表面にはシワ(脳回)が存在するなど発達しており、高次脳機能の基盤となっている。我々の研究室では、発達した大脳を持つ哺乳動物フェレットに着目して、フェレットの大脳皮質での遺伝子操作技術を子宮内電気穿孔法やゲノム編集技術を用いて独自に確立してきた。その結果、脳回などを持つ高等哺乳動物の大脳での遺伝子操作が可能となり、分子メカニズムの解析が可能となった。これらの技術的優位性を生かして、脳回形成にFGFシグナルが重要であることを世界に先駆けて見出してきた。そこで本研究ではフェレットとFGFを突破口として、高等哺乳動物に特徴的な大脳皮質の特性やその異常疾患病態の解明を行うこととした。FGF受容体の下流で活性化するシグナルを検討するために、フェレット大脳皮質の切片を作成し、免疫組織染色およびin situ hybridization法を用いて解析した。MAPK経路の活性化にはリン酸化MAPK抗体と Sproutyプローブ、AKT経路の活性化にはリン酸化AKT抗体とリン酸化S6K抗体を用いた。その結果、FGFを導入したフェレット大脳皮質でMAPK経路とAKT経路のいずれもが活性化していることを見いだした。さらにFGFシグナルを活性化する時期をCreERT2で変えると、表現型が異なってくることを見いだした。今後は、この表現型の違いがどのようなメカニズムで生じるのか解析する予定である。さらにMAPK経路およびAKT経路が活性化している細胞種を特定するために、大脳皮質の切片を作製し、RG細胞、oRG細胞数(Pax6 陽性 Tbr2 陰性)、IP細胞(Tbr2陽性)などの神経前駆細胞ごとの活性化を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍でフェレットの入荷の遅れが生じたが、研究室に保存してあったフェレットのサンプルを使うことにより順調に実験が進展した。切片を作成し、様々な染色が進行中である。フェレットについては入手が可能となってきたことから、問題なく実験を進めることができる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにFGFを導入したフェレット大脳皮質でMAPK経路とAKT経路のいずれもが活性化していることを見いだした。さらにFGFシグナルを活性化する時期をCreERT2で変えると、表現型が異なってくることを見いだしている。そこで今後は、この表現型の違いがどのようなメカニズムで生じるのか解析する予定である。FGFが重要であることがわかった時期の大脳皮質の切片を作製し、RG細胞、oRG細胞数(Pax6 陽性 Tbr2 陰性)、IP細胞(Tbr2陽性)などの神経前駆細胞ごとの活性化を検討する。さらに細胞分裂マーカーKi-67やリン酸化ヒストンH3、アポトーシスマーカーcleaved caspase 3を免疫組織染色で解析する。
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