研究課題/領域番号 |
20K16850
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
堀 友博 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (90456525)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ケトン性低血糖症 / 糖原病IX型 / ホスホリラーゼキナーゼ / PHKA2遺伝子 |
研究実績の概要 |
令和2年度中の実績として、Wild-type PHKA2発現ベクターとp.G991A変異 PHKA2発現ベクターを作製し、PHKA2の発現をイムノブロットで確認することができた。 令和3年度中の研究として、PhK活性の検討として、Wild-type・p.G991A変異PHKA2発現ベクターを用い、PhK活性を検討した。令和4年5月時点でPHKA2遺伝子のp.G991Aバリアントが実際にPhK活性が低下していることをin vitroで有意差をもって証明するには至っていない。しかし、正常対象群のPhK活性に比し、p.G991Aバリアントを有する患者のPhK活性は、ホスホリラーゼbに対するKmが高く(すなわち、ホスホリラーゼbに対する親和性が低い)、ホスホリラーゼbの濃度が低下すると、グリコーゲンの分解がより抑制される可能性があり、ケトン性低血糖症の病態におけるPHKA2遺伝子p.G991Aバリアントの関与を示唆していると考える。さらに、ホスホリラーゼb・ATPの温度変化に対する安定性を検討した。p.G991Aバリアントを有する患者のPhK活性は、健常コントロールの血液サンプル由来のPhK活性よりもより高温において不安定であることが確認できた。この温度感受性の特性は、バリアントを持つ子供が、特に発熱性感染症に関連して低血糖を呈することがある理由を説明できる可能性がある。 全国の原因不明のケトン性低血糖症患者に対する調査とPHKA2遺伝子p.G991Aバリアント解析については、症例を集積し解析を進めている段階である。 当院と関連の産院施設で遺伝子解析の承諾を得られた生後1か月児の一般集団におけるp.G991Aバリアントの有無の調査について、アンケートの配布・集積・解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発現実験系の計画について、Wild-type・p.G991A変異PHKA2発現ベクターは構築でき、in vitroの実験計画はおおむね予定通りに進行している。さらに、ホスホリラーゼb・ATPの温度変化に対する安定性についての実験において、前述のように臨床的に意味のある結果が得られた。 全国の原因不明のケトン性低血糖症患者に対する調査とPHKA2遺伝子p.G991Aバリアント解析について、症例の集積につき代謝異常症の専門家がいる各施設に呼びかけを行い、集積した症例の検討を行なっている。 当院と関連の産院施設で遺伝子解析の承諾を得られた生後1か月児の一般集団におけるp.G991Aバリアントの有無の調査を開始し、集積した症例の検討を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
発現実験系の計画について、PhK活性を、温度以外の環境条件の変更を含め検討している。 全国の原因不明のケトン性低血糖症患者に対する調査とPHKA2遺伝子p.G991Aバリアント解析について、アンケート結果に基づき、ケトン性低血糖症患者を診療している施設へ変異解析を依頼し、承諾が得られた症例について解析を行い、ケトン性低血糖症患者におけるPHKA2遺伝子p.G991Aバリアントを有する頻度を明らかにする。 当院と関連の産院施設で遺伝子解析の承諾を得られた生後1か月児の一般集団におけるp.G991Aバリアントの有無の調査につき、3000例の解析を目標に検体収集を進める。また、これらの小児がケトン性低血糖症を来したか否かについて、2歳時、4歳時に調査を行っている。 PHKA2遺伝子のp.G991Aバリアントを有するケトン性低血糖症患者と同バリアントを有しない患者の臨床症状の差異の解析について、アンケート調査でケトン性低血糖症患者の臨床症状や重症度(発症年齢、低血糖の頻度など)を解析し、PHKA2遺伝子のp.G991Aバリアント解析で同バリアントを有する患者群と有しない患者群の間での比較検討を行う予定である。
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