Wild-type PHKA2発現ベクターとp.G991A変異PHKA2発現ベクターを作製し、PHKA2の発現をイムノブロットで確認し、PhK活性を検討した。PHKA2遺伝子のp.G991AバリアントのPhK活性低下をin vitroで有意差をもって証明できていないが、正常対象群のPhK活性に比しp.G991Aを有する患者のPhK活性はホスホリラーゼbに対するKmが高く(すなわち、ホスホリラーゼbに対する親和性が低い)、ホスホリラーゼbの濃度が低下するとグリコーゲンの分解がより抑制される可能性があり、ケトン性低血糖症におけるPHKA2遺伝子p.G991Aの関与が示唆される。 ホスホリラーゼb・ATPの温度変化に対する安定性を検討した。p.G991Aを有する患者のPhK活性は、健常コントロールの血液サンプル由来のPhK活性よりもより高温において不安定であった。p.G991Aを有する子供が発熱性感染症に関連して低血糖を呈する理由を説明できる可能性がある。 全国の原因不明のケトン性低血糖症患者に対する調査とPHKA2遺伝子p.G991A解析について、本研究期間の3年間で、計10名に何らかのPHKA2のバリアントが同定されたが、p.G991Aは同定できていない。症例集積と解析を引き続き進める。 当院と関連の産院施設で遺伝子解析の承諾を得られた生後1か月児の一般集団におけるp.G991Aの有無の調査について、本研究期間の3年間で、合計2638名(男児1362、女児1276)を解析し、p.G991Aは、男児4名(全員へミ接合性)、女児10名(全員ヘテロ接合性)で同定された。これらの対象者のうち、その後のアンケート調査は2歳時点12名、4歳時点5名のアンケートを回収できたが、いずれも低血糖発作のエピソードは確認できていない。症例集積と解析を引き続き進める。
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