小児急性脳炎脳症は2000年代以降、生命予後は改善してきた。しかし、機能予後の改善が十分に得られているとは言えず、後遺症として高次脳機能障害を残す症例が多い。後遺症としての高次機能障害には、重症例に加え、その後の発達過程で顕在化する潜在性の障害が含まれる。しかし、脳症後の高次脳機能障害を客観的・定量的に評価する手法は確立していない。また、高次機能障害の定量的評価を行うことができれば、潜在的な脳機能障害を検出し、機能障害への早期の治療的介入や、現行および新規に開発される治療の効果を判定することが可能となる。本研究では、脳磁図を用い認知機能に関する脳神経ネットワークにおける正常小児の発達に伴う変化および急性脳炎脳症患児の機能障害の検出および障害部位を明らかとすることを目的としていた。 昨年度より脳磁計の不調が続き、設置されている脳とこころの研究センターの判断により継続的な計測が不能となった。そこで大幅に計画変更をし、脳磁図による上記評価から脳波を用いた上記評価へと変更をはかった。引き続き対象の募集および脳波測定を行っている。脳波のよる上記評価の妥当性はさらに検討が必要となる。脳波では頭蓋骨による信号の位置のずれ、信号の減衰が問題となる。すでに得られていた脳磁図データと近い時期に得られた同一人の脳波を比較検討することでその妥当性を検討した。しかし、脳波と脳磁場では信号推定の制度に差があり他の評価方法を追加できないかを検討している。
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