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2020 年度 実施状況報告書

TRIM22遺伝子異常による腸炎はIL-6,IL-12産生の制御異常が関与するか

研究課題

研究課題/領域番号 20K16852
研究機関京都大学

研究代表者

日衛嶋 栄太郎  京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (60773520)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード小児期発症 / 炎症性腸疾患 / TRIM22 / IL-6 / IL-12
研究実績の概要

難治性の小児期早期発症の炎症性腸疾患(IBD)は、未知の単一遺伝子疾患が多く存在していると考えられる。治療法確立のためには遺伝子変異による腸管炎症発症の病態解明が不可欠である。
近年、若年発症の難治性IBD患者の全エクソン解析において、E3リガーゼのTRIM22遺伝子変異が発見された。ヒト腸上皮系細胞株を用いた過去の研究では、同遺伝子変異による腸管炎症発症の分子メカニズムが解明できなかった。申請者らはTRIM22の炎症性サイトカイン産生能における働きを明らかにするため、ゲノム編集によりTRIM22遺伝子をノックアウトしたヒト単球細胞株(TRIM22 KO THP-1細胞)を作成した。予備実験において、TRIM22 KO THP-1細胞は、LPS刺激後NF-kB活性が減弱し、TNFα産生も低下するが、IL-6, IL12のmRNA, タンパクの産生は過剰になることを発見した。また、同細胞株は分子XというIL-6とIL-12のmRNAを分解する酵素のタンパク発現が低下するという結果を得た。このことから、TRIM22遺伝子異常による腸管炎症の発症にはIL-6, IL-12産生制御異常が関与している可能性があると考えられた。
これまでの研究結果をもとに、未解明のTRIM22変異による腸管炎症の分子機構を明らかにし、IBDの新規治療法に展開するための基盤となる研究を行う。そのために次を行う。
●TRIM22が分子Xタンパク発現を低下させる分子機序を解明する。
●TRIM22のノックアウト、或いは疾患関連変異を導入したiPS細胞由来マクロファージを用いて、或いはノックインマウスを用いて分子Xのタンパク発現やIL-6. !L-12などのサイトカイン産生機能を評価する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

令和2年度は「TRIM22遺伝子欠損により分子Xのタンパク発現が低下する原因を明らかにする」目的で以下の実験を行った。
TRIM22 KO THP-1細胞における分子XのmRNA量をqPCRで評価したところ、野生型TRIM22 THP-1細胞のものと同等であった。従って、TRIM22 が分子Xタンパクの安定性に影響を与えている可能性があると考えられた。次に共免疫沈降実験を行ったところ、野生型TRIM22 THP-1細胞におけるTRIM22と分子Xタンパクは無刺激で結合することがわかった。 TRIM22はユビキチン化に関わるE3リガーゼ活性を持つため、分子Xタンパクへのユビキチン化を評価する実験を行った。野生型TRIM22 THP-1細胞へのLPS刺激後、分子Xのユビキチン化は増加し、TRIM22 KO THP-1細胞においては減弱していた。更に分子Xにおけるユビキチン化部位の同定を行う目的で、変異型ユビキチンをHEK293T細胞に発現させたところ、野生型TRIM22存在下ではLPS刺激後に分子XのK29結合型とK63結合型ユビキチン化が亢進することがわかった。以上より、TRIM22存在下でみられる分子Xのユビキチン化は、分子Xのタンパク発現の安定性に寄与している可能性が考えられた。
「TRIM22変異をもつiPS細胞由来マクロファージにおける分子Xのタンパク発現やIL-6, IL-12, TNFα産生能を評価する」という項目については、新型コロナウイルス流行による影響で、研究に必要な施設、設備が一時的に利用できず、進めることができていない。

今後の研究の推進方策

TRIM22遺伝子の疾患関連変異を導入したiPS細胞由来マクロファージを作成して、分子Xの発現やIL-6, IL-12、TNFα産生能を評価する。また、現在申請者の留学先であったNIHで、ヒトの疾患で見つかった変異を導入したマウスを作成中である。完成したら同マウスを用いて、腸管炎症モデルにおける分子Xの発現や、IL-6, IL-12産生機能を調べる予定である。

次年度使用額が生じた理由

理由;次年度に繰り越し、分子生物学的試薬の購入に使用するため。
使用計画;分子生物学的試薬の購入に使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Rapid Flow Cytometry-Based Assay for the Functional Classification of MEFV Variants2021

    • 著者名/発表者名
      Honda Y, Maeda Y, Izawa K, Shiba T, Tanaka T, Nakaseko H, Nishimura K, Mukoyama H, Isa-Nishitani M, Miyamoto T, Nihira H, Shibata H, Hiejima E, Ohara O, Takita J, Yasumi T, Nishikomori R.
    • 雑誌名

      J Clin Immunol.

      巻: Online ahead of print. ページ: Online

    • DOI

      10.1007/s10875-021-01021-7.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 【原発性免疫不全症候群-最新の疾患分類と新規疾患を中心に-】自己炎症性疾患 インフラマソームに関連しない状態 TRIM222020

    • 著者名/発表者名
      日衛嶋 栄太郎(京都大学 大学院医学研究科発達小児科学)
    • 雑誌名

      日本臨床(0047-1852)78巻増刊7 原発性免疫不全症候群

      巻: 78 ページ: 453-454

  • [雑誌論文] 【原発性免疫不全症候群-最新の疾患分類と新規疾患を中心に-】免疫調節障害 大腸炎を伴う免疫調節不全 TGFB1欠損症2020

    • 著者名/発表者名
      日衛嶋 栄太郎(京都大学 大学院医学研究科発達小児科学)
    • 雑誌名

      日本臨床(0047-1852)78巻増刊7 原発性免疫不全症候群

      巻: 78 ページ: 255-256

  • [雑誌論文] Bruton tyrosine kinase deficiency augments NLRP3 inflammasome activation and causes IL-1β-mediated colitis2020

    • 著者名/発表者名
      Mao L, Kitani A, Hiejima E, Montgomery-Recht K, Zhou W, Fuss I, Wiestner A, Strober W.
    • 雑誌名

      J Clin Invest.

      巻: 130 ページ: 1793-1807

    • DOI

      10.1172/JCI128322.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Immunophenotyping of A20 haploinsufficiency by multicolor flow cytometry.2020

    • 著者名/発表者名
      Kadowaki T, Ohnishi H, Kawamoto N, Kadowaki S, Hori T, Nishimura K, Kobayashi C, Shigemura T, Ogata S, Inoue Y, Hiejima E, Izawa K, Matsubayashi T, Matsumoto K, Imai K, Nishikomori R, Ito S, Kanegane H, Fukao T.
    • 雑誌名

      Clin Immunol.

      巻: 216 ページ: 108441

    • DOI

      10.1016/j.clim.2020.108441.

    • 査読あり
  • [学会発表] SKIV2L遺伝子異常を同定したTricho-hepato-enteric syndromeの1例2020

    • 著者名/発表者名
      日衛嶋 栄太郎(京都大学医学部附属病院 小児科), 井澤 和司, 本澤 有介, 山本 修司, 八角 高裕, 滝田 順子
    • 学会等名
      日本小児栄養消化器肝臓学会雑誌(1346-9037)34巻1号(2020.04)
  • [学会発表] 免疫疾患の遺伝的背景 新規機能解析系によるMEFVバリアントの病原性評価・分類の試み2020

    • 著者名/発表者名
      前田 由可子(京都大学 大学院医学研究科発達小児科学), 本田 吉孝, 井澤 和司, 芝 剛, 田中 孝之, 東口 素子, 加藤 健太郎, 宮本 尚幸, 伊佐 真彦[西谷], 仁平 寛士, 柴田 洋史, 日衛嶋 栄太郎, 滝田 順子, 西小森 隆太
    • 学会等名
      日本臨床免疫学会総会プログラム・抄録集48回 (2020.10)

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公開日: 2021-12-27  

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