申請者らは、メンケス病などの従来の疾患と異なる特徴を持つ遺伝性銅代謝異常症の家系における網羅的遺伝子解析により、新規遺伝子CTR1に複合ヘテロ接合のナンセンスおよびミスセンスバリアントを同定し た。本研究では、同定された両バリアントが銅代謝に影響し、遺伝子Xが新規銅代謝異常症の候補となりえるかどうかの評価を目的としている。 2022年度は、変異特異的な銅代謝機能を評価するため、1倍体細胞であり全ての遺伝子を単独で持つHap1細胞株を用いて実験を行った。銅代謝に関する他の因子の影響をできるだけ小さくするため、ATP7AをノックアウトしたHap1細胞株を作成し、さらにCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いてCTR1遺伝子に一塩基置換を導入した。それらの細胞を銅含有培地で培養し、原子吸光度計を用いて経時的に細胞内銅濃度を評価した。その結果、上述の遺伝性銅代謝異常症家系で同定された2バリアントのいずれかを導入した細胞株では銅取り込みの低下を認めた。 研究期間全体を通して、従来の疾患とは異なる遺伝性銅代謝異常症において、新規遺伝子CTR1の関与をin vitro実験によって示すことに成功した。遺伝性銅代謝異常症としてはATP7A異常に伴うメンケス病・オクシピタールホーン症候群、ATP7B異常に伴うウィルソン病が知られているが、今回の研究により新たな遺伝性銅代謝異常症の存在の可能性を示すことができた。現在、論文投稿のための準備を進めている。
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