研究課題
若手研究
本研究は、気道症状を呈する気管切開術を施行児29例において、下気道の細菌感染症と非細菌感染症との臨床的特徴の差異を解析した。気管切開児を対象とした喀痰培養検査では既報と同様に、多くの症例において常在菌を有していることが示唆された。同時に行った網羅的リアルタイムPCR検査においても、常在菌と起因菌の鑑別は困難であったが、ウイルス検索の結果は一部で鑑別の判断材料になり得た。血液検査マーカーにおいては古典的マーカーが一定の有用性を示すことを明らかにした。
小児感染症学
気管切開児における下気道感染症は細菌感染症の判断が非常に困難かつ、多くの耐性化した常在菌により、広域抗菌薬が頻用される。しかし、これらの例の中にはウイルス感染や胃食道逆流症などの非細菌感染症例も数多くいると推定され、抗菌薬使用の適正化のためにも、気管切開児における細菌感染症の診断方法の確立が急務である。本研究では、網羅的リアルタイムPCR検査は気管切開児に対しての有用性は限定的であることを明らかとし、血液マーカーの有効性を示したことで、今後の感染症診療においての1つの指標となりえる。