研究課題/領域番号 |
20K16858
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
早川 誠一 広島大学, 病院(医), 助教 (60815314)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 一過性骨髄異常増殖症 / 急性巨核芽急性白血病 / ダウン症 / 異種移植 |
研究実績の概要 |
ダウン症候群に合併する一過性骨髄異常増殖症(TAM)は胎児肝にて発症し、約80%は自然寛解するが、寛解した約20%で骨髄においてダウン症候群関連骨髄性白血病を再発することが分かっている。本研究では、胎児肝における一過性骨髄異常増殖症の発症と骨髄でのダウン症候群関連骨髄性白血病の発症の病態にhomingに関わる分子が関与しているとの仮説を立て、検証を行っていくことを目的とした。 TAM芽球を用いたin vitroでの培養によりhomingに関わる分子EPCR、CXCR4誘導を行った。①DMEM + 10%FCS(Growth medium)、②DMEM+10%FCS+UM171 38ng(EPCR誘導条件)、③DMEM+10%FCS, 0.1%>O2, 5%CO2(CXCR4誘導条件)、④DMEM+10%FCS+rIL-3 50ng/ml(TAM芽球増殖条件)の4つの条件を設定して培養を行った。当施設において2020~2021年度にダウン症候群TAMの新規症例が発生しなかったため、凍結保存したTAM芽球細胞を検体として用いた。それぞれの条件によりEPCR、CXCR4の発現は誘導の検討を行った。EPCR、CXCR4の発現を認めるが再現性が得られず、2020年度と同様に、安定した信頼性のある結果が得られていない。全条件にIL-3を添加しての培養に変更し、適切な条件を検討している。 培養にて安定した結果が得られていないため、未培養の芽球を用いて新生仔ならびに成体免疫不全マウス(NSGマウス:NOD.CgPrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ)に対してTAM芽球の異種間移植を施行した。芽球の生着は確認できず、輸注細胞数の調整や、新規患者の細胞が入手できれば新規の細胞を用いた検討を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
予測した結果が得られていない原因として、培養条件の問題だけでなく、細胞の保存状態による影響が考えられる。前年度と同様に新規患者の発症がなく、新たな細胞が入手できていないため、新鮮な細胞での検討が困難であり、実験の進捗が遅れている主因と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
TAM芽球の保存検体を用いて、in vitroでの細胞培養によりEPCR、CXCR4を安定して誘導する条件の調整を継続して行っていく。ダウン症候群に伴う一過性骨髄異常増殖症新規症例が発生し次第、新鮮なTAM芽球および保存状態の良いTAM芽球を用いてのin vitroでの培養条件を再検証していく。 NSGマウスの繁殖ならびに異種移植実験は実施可能であり、細胞培養にて安定した結果が得られ次第、新生仔マウスも含めた異種移植も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規患者の発生がないこと、保存細胞のストックの問題により予定された実験が十分に実施できておらず、次年度使用額が生じている。次年度使用額にて、予定しているが未実施の細胞培養実験ならびにNSGマウスに対する異種移植実験を継続して行う。
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