研究課題
動脈管は通常出生後に速やかに閉鎖するが、これが閉鎖しない動脈管開存症は新生児の予後を左右する。動脈管の解剖学的閉鎖には、内膜肥厚形成が必須である。内膜肥厚は中膜から内側へ遊走してくる血管平滑筋細胞と複数の細胞外基質で形成され、動脈管の内腔を狭めることで動脈管を解剖学的に閉鎖させる。本研究ではFibulin-1という細胞外基質に注目し、他の細胞外基質と共役して動脈管内膜肥厚を起こす機序を、検討した。バーシカンのヒアルロン酸結合部変異マウス(VcanΔ3/Δ3)の新生児動脈管組織の弾性線維染色を行い内膜肥厚形成を評価した。また、蛍光免疫染色を行いFibulin-1 とバーシカン、ヒアルロン酸が共局在するか検討した。この結果、VcanΔ3/Δ3 新生仔での動脈管内膜肥厚の減弱が示され、バーシカン-ヒアルロン酸複合体が個体レベルで動脈管内膜肥厚形成に関与することが証明された。次に、Fibulin-1が動脈管閉鎖に果たす役割を検討した。Fibulin-1が内膜肥厚形成に重要な役割を果たすかを検討するため、EP4欠損マウス動脈管組織をFibulin-1リコンビナント蛋白添加培地で72時間器官培養し組織切片を作製、弾性線維染色で内膜肥厚形成の程度を評価した。また、Fibulin-1欠損マウスの新生児動脈管の組織学的解析を行い、弾性線維染色により動脈管開存症の有無、内膜肥厚の程度を評価した。その結果、EP4欠損マウス新生仔動脈管組織で内膜肥厚が形成され、Fibulin-1欠損マウス新生仔で、動脈管内膜肥厚が弱く、動脈管開存症となることが示された。この結果より、Fibulin-1が動脈管内膜肥厚形成に個体レベルで大きく関与することが証明された。これらの研究の成果を、学会および論文で発表した。
1: 当初の計画以上に進展している
遺伝子改変マウスを用いた実験により、個体レベルでの動脈管内膜肥厚に果たすFibulin-1の役割を明らかにすることができた.
ヒト動脈管組織を用いて、Fibulin-1、バーシカン、EP4受容体の組織内発現分布を検討する.また、EP4下流以下でのFibulin-1を誘導するシグナル経路をより詳細に検討し、新規薬剤開発のターゲットを検討する.
学会がすべてオンライン学会となり、旅費が発生しなかったため、当該費用と翌年度分を合わせて研究に必要な物品費等にあてる予定.
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Arterioscler Thromb Vasc Biol.
巻: 40(9) ページ: 2212-2226
10.1161/ATVBAHA.120.314729.