研究課題/領域番号 |
20K16863
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
笹脇 ゆふ 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60850360)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 概日リズム / 発育 |
研究実績の概要 |
妊娠期の交代制勤務により低体重児が増加するリスクが指摘されている。しかし、妊娠期の交代制勤務により子の発育不全が引き起こされるメカニズムは明らかになっていない。そこで、本研究では胎生期及出生早期の明暗周期撹乱が発育不全をもたらすメカニズムを解明することを目的とした。 まず、メカニズムの解明に先立ち、本研究では申請者が所属する八木田研究室で独自に開発された、リバーストランスレーショナル研究手法の一つである「マウスコホート」モデル系を用いて、胎生期から生後早期の明暗周期撹乱が野生型マウスの表現型にどのような影響を与えるのかを明らかにした。「マウスコホート」モデル系とは、マウスを明暗周期撹乱条件に曝露させ、長期的かつ前向きに個体機能の変容を観察する実験系である。本研究では、胎生9日齢から生後8週齢までの間、マウスを明暗周期撹乱条件(明暗周期が2日ごとに反転)と明暗周期を固定した通常の飼育条件(12時間明期:12時間暗期)に曝露させ、体重の推移を連続的に追跡した。その結果、雌雄ともに明暗周期撹乱条件に曝露したマウスで体重が一貫して減少している傾向を示すことを明らかにした。このことから、本実験系は妊娠期の交代制勤務による子の発育不全を明らかにするために有効であることが示された。 続いて全く同一の条件を用いて追実験を行い、追実験群でも妊娠期の明暗周期撹乱で子の体重が低下していることを明らかにした。1回目の実験、及び追実験の結果で再現性が得られたことから、胎児期に明暗周期が2日ごとに反転する頻繁な明暗周期撹乱に曝露することは、子の発育不全という表現型の変化を引き起こすことを明らかにした。今後は、この実験系を元に妊娠期の明暗周期撹乱が子に与える長期的な影響を明らかにし、メカニズムの解明についても評価する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、申請者が所属する八木田研究室で独自に開発された「マウスコホート研究」の手法を用いた研究のひとつである。本研究では、これまで本研究室にて実施されてきたマウスコホート研究での手法を参考に、妊娠期野生型マウスに明暗周期撹乱という環境撹乱を与え、他の飼育条件を同一にした際の個体の表現型の変化を前向きに観察した。その結果、妊娠期の明暗周期撹乱が子の発育に影響を与えることが示された。続いて全く同一の条件の追実験を行い、追実験群でも妊娠期の明暗周期撹乱で子の体重が低下していることを明らかにした。1回目の実験、及び追実験の結果で再現性が得られたことから、胎児期に明暗周期が2日ごとに反転する頻繁な明暗周期撹乱に曝露することは、子の発育不全という表現型の変化を引き起こすことを明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、本実験系は妊娠期の交代制勤務による子の発育不全を明らかにするために有効な実験系であり、得られた結果には再現性があることが確認された。今後は、まず胎児期の明暗周期撹乱による表現型の長期的な変化を明らかにし、さらにメカニズム解明のための実験にも取り組む。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度行った実験には新たに購入する必要のある物品がなかったため、予定よりも使用額が少なくなった。繰り越し分は来年度の予算と合わせ、明暗周期撹乱の子の体重への長期的な影響を評価するための実験、メカニズム解明のための実験、学会発表等に使用する。
|