研究実績の概要 |
妊娠期の交代制勤務により低体重児が増加するリスクが指摘されている。しかし、妊娠期の交代制勤務により子の発育不全が引き起こされるメカニズムは明らかになっていない。そこで、本研究では胎生期及出生早期の明暗周期撹乱が発育不全をもたらすメカニズムを解明することを目的とした。まず、メカニズムの解明に先立ち、本研究では申請者が所属する八木田研究室で独自に開発された、リバーストランスレーショナル研究手法の一つである「マウスコホート」モデル系を用いて、胎生期から生後早期の明暗周期撹乱が野生型マウスの表現型にどのような影響を与えるのかを明らかにした。本研究では、胎生9日齢から生後8週齢までの間、マウスを明暗周期撹乱条件(明暗周期が2日ごとに反転)と明暗周期を固定した通常の飼育条件(12時間明期:12時間暗期)に曝露させ、体重の推移を連続的に追跡した。その結果、雌雄ともに明暗周期撹乱条件に曝露したマウスで体重が一貫して減少している傾向を示すことを明らかにした。このことから、本実験系は妊娠期の交代制勤務による子の発育不全を明らかにするために有効であることが示された。また、我々はこれまでの研究で、胎生10-12日目のマウスでは体内時計は形成されていないが、胎生17-19日目のマウスでは概日リズムの母子同調が形成されることを明らかにした[Umemura et al.,2017]。我々は、子の発育不全には、暗周期撹乱により母体と胎仔の母子同調が撹乱され、胎児発育不全が起きたことが影響しているのではないかと考えた。この体内時計の同調因子の一つとしてグルココルチコイドが考えられる。当研究室では、グルココルチコイドによる母子同調作用と、明暗周期撹乱による影響について注目し、解析を進めている
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