研究課題
本研究の目的はヒトの血液中に存在する骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)に着目し、食物アレルギーの免疫抑制機構を明らかにすることである。MDSCの主な作用はIL-10やTGF-β等を産生することでエフェクターT細胞の免疫応答を強力に抑制し制御性T細胞(Treg)の増殖を促すことで免疫系を負に制御する。しかし食物アレルギーを持つヒトにおいてMDSCを介した免疫抑制機構は分かっていない。MDSCは単球系MDSC(M-MDSC)と多形核細胞系MDSC(PMN-MDSC)に大別される。食物アレルギーを持つ小児の血液より分離したM-MDSCの割合は、PMN-MDSCと比べて有意に多かった。また、患者由来のM-MDSCとCD4陽性T細胞を共培養した結果、CD4陽性T細胞の活性化は有意に抑制された。2022年度に実施した実験の結果より、M-MDSCによるCD4陽性T細胞活性化抑制能と患者血液中のTregの割合に正の相関があることが分かった。これらの結果から、食物アレルギーを持つヒトにおいて、主にM-MDSCがアレルギー反応の鍵となるエフェクターT細胞の過剰な活性化を抑制していることが示唆された。一方で食物アレルギーの耐性獲得には抗原特異的Tregが関与すると考えられているが、MDSCが抗原特異性を有するTregを誘導するのかは分かっていない。M-MDSCの免疫抑制能の強さと抗原特異的Tregの関連についても、今後検討していきたいと考えている。
2: おおむね順調に進展している
現時点では当初想定した仮説を支持する結果を得ており、おおむね順調に進展していると考えている。
食物アレルギー患者由来のM-MDSCは抗原特異性を持ったTregを誘導するのかを検討し、耐性獲得に至る機序の一端を解明したい。
新たな研究課題を見出し、倫理委員会への申請に時間を要しているため、実験等が遅延した。倫理委員会の承認を得しだい、速やかに研究に着手できるよう準備を進めている。
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アロスエルゴン
巻: 2 ページ: 729-735