研究課題
本研究は骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)が食物アレルギーの免疫応答をどのように抑制しているのかを明らかにする研究である。われわれは、これまでに経口免疫療法を行ったマウスモデルにおいて単球系MDSCが食物アレルギーの持続的無反応の誘導に関与していることを明らかにした。ヒトではCD14が単球系MDSCの表面マーカーの1つとして知られており、CD14陽性細胞に着目して研究を進めている。当該年度では、鶏卵アレルギー患者の血液検体を使用して抗原特異的な免疫抑制能の研究を行った。具体的には、血液より末梢血単核細胞(PBMC)を分離し、磁気ビーズを用いてCD14陽性細胞を無菌的操作で分離した。さらにオボアルブミンの有無に分け、PBMCとCD14陽性細胞を20時間共培養した。その後、CD137陽性細胞とCD154陽性細胞をマーカーとして、エフェクターT細胞と活性化制御性T細胞の割合をフローサイトメーターで測定した。現時点までに、CD14陽性細胞はエフェクターT細胞の活性化を抑制し、抗原特異的制御性T細胞を活性化させる知見を得ている。今後は患者数を増やし、共培養した上清中のサイトカインを測定することでより詳細に機序を解明していく。さらには耐用量や耐性獲得に至るスピードと、単球系MDSCの割合の相関など、CD14陽性細胞の臨床的な役割を明らかにしていく。
2: おおむね順調に進展している
実際の患者検体を用いてプロトコール通りに研究を遂行でき、想定していた研究結果を得ている。予定していた患者数には未達であるが、おおむね順調に進展していると評価している。
今後は共培養によって得られた上清を利用し、様々なサイトカインを測定することで、抗原特異的な免疫応答抑制の機序について詳細に解明していく予定である。また、抗原の耐用量や耐性獲得に至るスピードの違いと、単球系MDSCの割合に相関があるかなど、臨床的な意義を検討していく。
研究の遂行に応じて試薬や器具を購入した。解析した症例数が予定した症例数より少なかったため、次年度使用額が生じた。
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小児科診療
巻: 86 ページ: 85-88