研究課題/領域番号 |
20K16872
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田村 彰広 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 客員研究員 (90841180)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 単球 / 神経芽腫 / 不均一性 / 予後予測 |
研究実績の概要 |
神経芽腫は、自然退縮する予後良好群から集学的治療後も半数以上が再発する高リスク群まで存在する不均一な悪性腫瘍である。兵庫県立こども病院の有する膨大な臨床データを元に、神経芽腫の免疫学的予後予測因子の探索を行った。末梢血単球絶対数(absolute monocyte count;AMC)X末梢血リンパ球絶対数(absolute lymphocyte count: ALC)≧1×10E6をHigh group、末梢血単球絶対数×末梢血リンパ球絶対数<1×10E6をLow groupとして二群化したところ、High group(n=38)の4年無増悪生存率が81.7%に対して、Low group(n=17)の4年無増悪生存率が31.7%で、末梢血単球数と末梢血リンパ球数の乗算値が低値の群で有意に予後不良であった(p<0.001)。さらに、この新規パラメーターを元に高リスク神経芽腫を二分化すると、High group(n=17)の4年無増悪生存率が59.8%に対してLow group(n=13)の4年無増悪生存率が8.5%(p<0.001)であった。これまで分離不可能とされていた超高リスク群とそれ以外を明確に分離することに成功した。初診時の末梢血単球の状態を評価することにより、個別化医療の実現に繋がる可能性を示す重要な発見である。
最新の研究から、単球はこれまでの想定以上に多様であることが示唆されており、1細胞RNA-seqを用いた単球サブセットの不均一性解析を計画した。
健常人末梢血単球を用いて1細胞RNA-seqを行い、得られたデータをUMAPで次元削除したところ、表面抗原で規定した単球集団中に4つの単球サブセットが可視化された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経芽腫の新規予後予測バイオマーカーの抽出に成功した。 single cell RNA-seqを用いた単球不均一性解析方法を確立した。
|
今後の研究の推進方策 |
新規単球サブセットを高感度に分離するフローサイトメトリーパネルを開発予定である。 神経芽腫を始めとした様々な小児がん患者における単球の不均一性を解析し、臨床情報との統合解析により、疾患悪性度を規定する特異的単球サブセットやシグナルを同定する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、解析対象細胞集団の絞り込みを行うため、既存臨床情報の解析および単球不均一性解析手法の確立を行ったため、使用額が予定より少なくなった。翌年度は、当該年度に得られた解析手法を用いて、多数のサンプルを用いた解析を行う予定であるため、翌年度分と合わせた研究計画とした。
|