研究実績の概要 |
現在、WHO脳腫瘍分類では、病理所見と遺伝子プロファイルによる統合診断が求められており、脳腫瘍の診断には遺伝子解析が必須であり、2021年度に改訂された脳腫瘍WHO分類(第5版)においては、遺伝子解析の実施についてより詳細に記述されている。本研究は、小児脳腫瘍の中でも高頻度の神経膠腫について、多施設共同研究として集められた検体の遺伝子解析を行い臨床像や病理所見とあわせて検討することにより、これまで十分なデータが存在しない本邦の小児神経膠腫のプロファイルを明らかにすることを目的とし開始した。 2021年度はさらに約150例の小児神経膠腫の解析を進めた。方法としては、第一段階として、パイロシークエンスや逆転写PCRを用い小児神経膠腫に好発する遺伝子を検索し、典型的な遺伝子異常が検出されなかった症例や、非典型的な症例については、第二段階として、メチル化解析やRNAシークエンスを行った。また、2021年度は、実施する解析に複数の遺伝子を追加や、腫瘍含有量が少ない症例についてはデジタルPCRを用いて変異を検出することも行った。これらにより、新たなWHO脳腫瘍分類への対応できるように検索可能な範囲を増やし精度の向上を目指した。これまでの症例の蓄積により、本邦の小児脳腫瘍において、BRAF融合遺伝子をもつ例の85%は毛様細胞性星細胞腫であり、また治療標的となるBRAF V600Eが陽性となる組織は多岐にわたるがびまん性星細胞腫が高頻度(35%)、IDHは比較的年齢の高い世代に限って検出され10歳未満の症例にはみられないことなどが示された。これらは、今後の本邦における治療開発を進めるうえでも重要な資料になると考えられる。また、非典型的な臨床像をとった症例について、メチル化解析とDNA, RNAシークエンスを行った結果。既知の病型分類に合致しない症例がある可能性が示唆され報告した。
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