研究実績の概要 |
ZTTK症候群は21番染色体に局在する遺伝子変異SON(21q22.11)のde novoヘテロ変異により生じる知的障害であり、これまでに31例の患者が国内外で報告されている。遺伝子変異から知的障害発症に至る機構は不明であるが、患者由来組織で変異箇所に関わらずSONのmRNAおよび蛋白質の発現量が低下していたことから、本疾患における知的障害の病態基盤としてSON変異によるハプロ不全が考えられた。また、神経画像検査により多くの患者で脳回異常などの脳形成不全が認められることから、SONハプロ不全が大脳皮質形成異常を引き起こす可能性が示唆されている。 これまでの研究で、マウス脳神経前駆でのSONノックダウンによって神経細胞移動障害と生後の樹状突起のスパイン形成の抑制(P60)が起こることを示してきた。また、正常型ヒトSONおよびRNA結合領域のみ欠損した疾患変異型ヒトSON(SONm1)の強制発現ではこれらの表現型はレスキューされるが、一方でDNA結合領域を含む大部分の機能ドメインを欠損した疾患変異型ヒトSON(SONm2)の強制発現ではレスキューされなかった。 ZTTK症候群で同定されているSON変異はそのほとんどがナンセンス変異かストップコドンとなるフレームシフト変異であり、これらの変異遺伝子から生じるmRNAの多くは分解される事が知られている。SONm1が正常型SONと同様のレスキュー効果を示したことは、この変異を持つ患者脳内ではSONm1が分解されSONハプロ不全をきたし神経症状が引き起こされたことを強く示唆している。 これまでの研究成果をまとめ論文として発表した(Molecular Brain, 2020, 巻:13,ページ: 80-80)。
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