研究課題/領域番号 |
20K16882
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
加藤 明英 秋田大学, 医学部附属病院, 医員 (90865718)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症 / ライソゾーム病 / タンデム質量分析 / 乾燥濾紙血 |
研究実績の概要 |
ライソゾーム病はライソゾーム内の酸性分解酵素が先天的に欠損していることにより、多量のグリコーゲン・脂質・ムコ多糖などが蓄積し、全身の多臓器に障害をきたす、進行性・不可逆性の疾患である。近年、酵素補充療法や低分子治療薬などの治療の進歩に伴い、早期診断の重要性が増しており、乾燥濾紙血(DBS) を用いたスクリーニング法が注目されている。酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)もそのひとつであり、2022年にASMDに対する酵素補充療法が世界で先駆けて日本で承認された。従来、本研究室ではASMDの精密検査施設として、患者の培養皮膚線維芽細胞を用いてASM活性を測定してきたが、スクリーニングに対応すべく、新たな診断法を確立する必要があった。 本研究室で診断したASMD患者1名と、当科で入院加療を行った非ASMD患者62名のDBSを用いて、ハイリスクスクリーニングに対応可能な診断方法を確立することに成功し、令和4年度に雑誌論文として報告した。また、県内総合周産期センターと共同研究として、NICUに入院した児を対象に新生児スクリーニングを行った。のべ280人の新生児のDBS中ASM活性を測定し、酵素活性と臨床データの統計学的解析の成果を学会発表した。本研究で新たに確立した方法を用いて、令和4年度よりDBSによるASMDの診断を開始した。治療薬の新規承認により疾患認知度が高まり、以前と比べ多くの検査依頼がある。本研究の成果をもとに、ASMDの早期診断・早期発見への寄与を続けていく。 また、酵素補充療法はASMDの主要な症状である肝脾腫・呼吸器症状には著効する一方で神経症状には無効であるため、神経症状治療へ向けたさらなる病態解明が必要である。高感度・高分離測定技術を用いて、ASMD患者検体のリピドミクス解析を行い新規バイオマーカーの同定を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の1つ目である、ASMDのDBSを用いたハイリスクスクリーニングに対応可能な診断法開発に関しては順調な経過で、診断方法を確立して成果報告も行っている。 目的の2つ目である、新規バイオマーカーの同定に関しては、現段階で新規ASMD患者が見つかっておらず、ASMD患者検体が1名分のみであるので、研究が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で確立した診断法を用いて、今後もASMDの早期診断・早期治療に寄与できるよう研究を継続していく。また、他科や他施設と連携して、肝脾腫・間質性肺炎・脂質異常・黄疸などをターゲットとしたハイリスクスクリーニングを展開し、新規ASMD患者診断を目指す。その中で、ASMD患者検体を収集して網羅的リピドミクス解析を行って新規バイオマーカーを検索し、さらなる病態解明を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究により確立した診断方法を用いて、引き続き来年度もASMDの診断を行うことと、ASMD患者検体の網羅的リピドミクスを行うためである。また、研究成果をオープンアクセスジャーナルへ投稿予定であり、誌上発表するための経費を次年度使用とした。
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