研究実績の概要 |
2022年は遺伝性骨髄不全症候群の遺伝子パネル解析で原因遺伝子が不明だった10家系30例の全エクソーム解析を実施した。これにより新たに3例で遺伝子診断を得ることができた。トリオ解析によって同定された原因遺伝子は、RPL19(先天性赤芽球癆)、NOTCH1(先天性奇形症候群)、TNFRSF13B(原発性免疫不全症候群)であった。 研究期間全体(3年間)を通じて、原因遺伝子が不明の遺伝性骨髄不全症候群症例に対して、患者および両親検体を用いたトリオ解析を37例で、患者および父母いずれかの検体を用いたデュオ解析を2例で実施し、39例のうち11例(28%)で原因遺伝子を同定することができた。得られた遺伝子診断(原因遺伝子)は、先天性赤芽球癆(RPL5、RPL19、各1例)、ファンコニ貧血(FANCA、1例)、先天性角化不全症(RTEL1、1例)、家族性血小板異常症(RUNX1、3例)、シュバッハマン・ダイアモンド症候群(SBDS、1例)、AMeD症候群(ADH5+ALDH2、1例)、先天性奇形症候群(NOTCH1、1例)、原発性免疫不全症(TNFRSF13B、1例)であった。本研究により、遺伝性骨髄不全症候群におけるトリオ解析の有用性が明らかとなった。また、本研究は、遺伝性骨髄不全症候群の新たな病型であるAMeD症候群(ADH5, ALDH2二遺伝子疾患)の発見につながり、新規原因遺伝子発見に寄与した。本研究で診断された家族性血小板異常症の症例を含めたRUNX1変異症例について、表現型(臨床像、血液象)および遺伝型との関連を詳細に検討し、論文発表した。
|